豊年祭に旧盆と行事が続いたと思ったら今度は選挙である。市民にとっては息をつく暇がないというのが実感ではないか。石垣市議会議員選挙が2日告示され、定数22に対して30人が立候補した。9日には投開票される。
■陸自配備争点
周知の通り最大の争点は平得大俣地区への陸上自衛隊の配備計画である。予定地は優良な農地や八重山でも有数のマンゴー生産地であることから住民にとっては死活問題で島のあらゆる面で計り知れない影響が迫っている。
そうしたなか、衝撃的なニュースが飛び込んできた。琉球大学の渡久山章、沖縄大学の桜井国俊両名誉教授が予定地を起点に地下水などが流れ込む宮良川水系の地形、地質、水分環境の調査を実施、その結果を現地で記者会見を開いて発表した。
お二人はいずれも陸水学、環境化学、環境学の専門家。「宮良川の表流水、地下水に及ぼす影響を回避するため環境アセスメントが不可欠」として市に対して防衛省にアセスの実施を求めるよう提言している(2日付8面)。
環境アセスメントというのは大規模な開発事業などによる周辺環境への影響を事前に調査することで予測、評価を行う手続きのこと。1997(平成9)年に「環境影響評価法」が制定され、それと前後して地方自治体でも条例によって厳しく規制する制度も設けている。
■観光に影響も
要するにこれまで何十年、何百年という時間を経て形成されてきた自然に手を加えるときは事前にその影響を避ける手立てをしなさいよということだ。宮良川といえば石垣島でも大きな川として知られ昔から民謡にも歌われるなど住民に親しまれてきた川である。毎年春の卒業を控えた地元宮良小学校の6年生が前年の夏に手作りイカダによる川下りを体験している。5年生以下は川の歴史、周辺に広がるマングローブに関する勉強、浜遊びなどを実施、今年で39回を数えている。
そうした子どもたちが水に親しむ川の上流で自衛隊の基地が造られ、その影響で川が汚染されたら、と考えるだけで怖くなる。宮良川は観光資源としても活用されている。夏になると多くの観光客がカヌーやSUP(スタンドアップパドルボード)を楽しんでいる。そうした人たちや観光業者への影響は大丈夫か。
■心配な右傾化
地下水への影響では、お隣の宮古島でも同様の問題が起きている。2016年6月、陸自配備計画を巡り下地敏彦市長を支える与党系市議8人と公明会派2人が候補地の「旧大福牧場」周辺への配備を断念するよう要請したのである。旧牧場周辺には市内最大の地下水源があり基地配備に伴う悪影響を懸念しての要請で計画はその後変更された。
それにしても最近の石垣島の右傾化は気になる。街の至るところに「自衛官募集」の横断幕が見られる。前市政ではそんなことはなかった。有識者らが編集した副読本「八重山を学ぶ」が継続採用を拒否された。安倍政権への追従が明確だ。地方自治体と国は対等の立場だ。命を賭けて国と対峙した翁長雄志知事の生き方とは対象的な石垣市政の今後が気がかりである。今度の選挙では有権者の良識ある判断を期待したい。