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理科は面白くないか

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■「理科離れ」は止まったか

 本年度の全国学力・学習状況調査に3年ぶりに理科が加わったが、その結果から子どもたちの理科に関する興味関心は必ずしも高まっていないことがうかがえる。「理科の授業が好き」は小6で全国平均こそ71・27%(石垣市45・33%)と高いものの、理科の授業は「大切だと思う」は全国、石垣市ともに50%台半ばである。中3では全国、石垣市ともに両設問とも「当てはまる」は30%台にすぎない。「将来理科や科学技術に関する職業につきたいか」についても小6、中3、全国、石垣市を問わず7~8割の児童生徒が「どちらかというと当てはまらない」と回答している。2011年度スタートの現行学習指導要領は理科の学習をより重視し、授業時数も大幅に増やしたのに皮肉な結果である。 

 快適で豊かな生活は理科(科学技術)の力に負うところが大きい。人類に突き付けられたエネルギー問題や環境問題にしても、それを乗り切る英知のかなりの部分は理科学習の延長線上に表れるのだろうから「理科離れ」が続いているとすればゆゆしきことだろう。

■有用かつロマンさえも

 理科はむしろ比較的楽しい学習と言えないだろうか。それにこれほど有用な学習はない。本来子どもはサバイバルに興味を示すが、例えば無人島に漂着したとする。海水を食塩や飲み水に変える。食べられる野草を摘む。魚の習性を利用して捕獲する。なぎさで拾ったガラス片で太陽光を集め火を起こす。空行く雲の形状や速度、大気の湿り気や潮鳴り等を勘案して天気を予測する。星空から季節や島のおおよその位置を知る。安定性の高い筏(いかだ)を組む。これらはすべて理科学習の応用である。文字通り「生きる力」だ。

 あるいは以前ニュートリノは光より速いかどうかが注目を集めた。光より速ければタイムマシンも夢ではないのではないか。結局光速が最速であることは動かなかったようだが、ニュートリノをめぐる報道は多くの人の知的好奇心をかきたて、夢を膨らませた。物理学という名の理科のロマンであった。

■克服に向けた連携強化を

 八重山には日本一の星空がある。身近に控えた海、山、川の豊かな自然とあわせて観測、観察にはもってこいのまほろばだ。理科教材の宝庫といってもいいだろう。地の利を生かしここ八重山で「理科離れ」を食い止める先鞭(せんべん)をつけることはできないだろうか。

 子どもたちの好奇心を呼び起こす実験の充実は必須だ。ところが現状は予備実験等の準備や片付けに忙殺される上に授業時数が増え、子どもたちの興味を引く実験が十分にできないという教師の声もあると聞く。市当局は市街地の学校の実験の授業に補助要員を配置する予算措置は取れないだろうか。

 他紙に実験を「『おもろいやん』言わせたい」という理科教師の寄稿があった。学校・教師の一層の奮起が望まれるところである。

 ところで文科省は「理科離れ」の要因の一つに「自然体験の不足」を挙げたが、この夏休み保護者等大人は子どもたちをどのくらい野外に連れ出せているのだろうか。


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