台湾を旅行して、龍山寺（ロン・サン・ス）を訪れたことがある人は多いだろう。台湾で最も古い寺のひとつ。台北を代表する観光名所でもある。寺のホームぺージによると、建立は１７３８年。ことしでちょうど２８０年である▼龍山寺があるエリアは、19世紀には台湾の３大都市のひとつに数えられた。現在は萬華（ワン・フア）と呼ばれ、台湾随一の繁華街だ。多くの人が働き、あるいは働かされ、時には非合法な商売が横行する▼萬華で生まれ育ったガイド役の男性とともに萬華を歩くミニツアーに参加した。参加者約30人は、ほとんどが20代から30代の台湾人である▼中国語と台湾語で行われる説明を理解するのは、筆者には難しかったが、終了後にガイド役の男性に話を聞くと、「３０００人の女性が働いていて、１人が１日で平均４万円稼ぐ」と説明された。客には当然、日本人もいる▼その街を理解しようと思うなら、まずは歩いてみることだ。視界に入ってくる風景は、それだけで有益な判断材料になる。と同時に、外側から眺めていても分からないことがある。今回のツアーに参加してあらためて痛感させられた▼萬華の入り組んだ路地を歩くと、女性がたたずんでいたり、何人かでだべっていたりすることが多い。この人たちは「後ろ」にどんな物語を背負っているのだろうか。（松田良孝）
↧