■国の専権事項に口を挟むな
中山石垣市長は18日、「南西諸島圏域の防衛体制・防災体制の構築のために石垣島への配備部隊の必要性を理解した上でそれを了解する」と平得大俣への陸上自衛隊配備受け入れを表明した。
2016年12月に防衛省を訪ね、諸手続き開始了承を伝えたにもかかわらず、その後、「受け入れ可否の最終判断ではない」と詭弁(きべん)としか思えない釈明をしていた。
今回も「受け入れるということは、受け入れないこともあり得る。配備計画は国の専権事項なので受け入れられないという判断は基本的にない。逆の受け入れるという言葉は使わずに、手続きを進めることを了解した」と述べている。
国の専権事項なら受け入れという言葉も使用しないという。市民からみれば異様だ。そもそも、外交防衛が国の専権事項で地方自治体が口を挟めないというならば、なぜ「了解」といえるのか。「了解」発言は国に対する越権行為ではないか。
中山市長の表明は、怒りや驚きというよりも、「詭弁」「姑息(こそく)」という印象を与えたのではないか。
■公明党は認識不足
中山市長が早晩受け入れを表明することは既定路線だった。
八重山防衛協力会顧問を務め、自衛隊入隊者激励会に出席したり、海上自衛艦の石垣港入港を歓迎したりする行動、自衛隊配備の必要性を理解しているという発言などから歴然としていた。支持母体も配備推進派だ。
3月の市長選で中山氏を支持した公明党八重山連合支部長の大石行英市議は、中山市長の受け入れ表明を受け、「重大な協定違反」と怒りをあらわにした。
関係者は「陸上自衛隊のために闘ったのではない。公明党は利用されたのか、今後、地殻変動が起きるかもしれない」と述べたというが、中山氏の姿勢に対する認識不足のそしりは免れない。今後の公明党の動向に注目したい。
■地方自治を破壊か
中山市長は今回の陸自受け入れについて、市議選のほか10月から施行される改正県環境評価条例(環境アセス)を挙げた。
改正内容は、土地の造成を伴う事業(20㌶以上)を環境アセスの対象とするもの。配備予定地は46㌶、うち市有地が23㌶あり、当然対象となる。
ただ、経過措置として来年3月末までに事業を実施すれば改正規定が適用されないため、今回の表明はアセスの対象となることを避ける駆け込み判断だった。
アセスが実施されなければ、大規模な土地造成が動植物や水など自然環境にどのような影響を与えるのか、これをどう保全するのか、詳細が分からず、市民の不安は募るだろう。
約5万市民の生命財産を守るという地方自治体の首長として、アセス回避に手を貸してもいいのだろうか。
石垣市民が選んだ市長が、「外交防衛は国の専権事項」を錦の御旗のようにかざして受け入れを表明する。これは、地方自治を破壊することにつながらないか。到底、納得がいかない。
市民団体が市長への面談を求めたところ、市側から「抗議を受け付けない」と断られたという。なぜ受け付けないのか。資質さえ疑われる。