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野性動植物との共存考える いきものトークカフェ

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八重山の固有種保全に向けて、外来種の駆除について意見を交わす参加者ら=8日夜、環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

 南西諸島のみに生息する野生動植物と人との共存を考えようと、世界自然保護基金(WWF)ジャパン・トラフィック主催の「いきものトークカフェ」が8日夜、環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターで開かれた。意見交換では地域住民33人が学識者らと外来種駆除の是非を議論。兵庫県立大学自然・環境科学研究所の太田英利教授は「(外来種を持ち込んだ)人間が悪いのは当たり前で、だからこそ責任を持って駆除する」と人と生き物を明確に区別することを求めた。

 トークカフェは「南西諸島の生きものたちの未来~人による利用と影響~」をテーマに、学識者と行政、地元団体などの代表4人が講演。生息地の減少や外来種による捕食、売買目的の捕獲を背景に、ヤエヤマセマルハコガメなどの固有種が絶滅の危機にひんする現状と保全策について、それぞれの視点から提言した。

 南西諸島の島しょ性が生き物に果たす機能を紹介した太田教授は、孤立した区域で保たれる機能「遺存固有種の形成の場」が、人間活動に伴う外来種の侵入で失われることを伝えた。

 参加者から「外来種の絶滅」を求める声が上がると、太田教授は「外来種が在来種を圧迫する前に除去できれば、それに越したことはない」と応じた。

 その上で「外来種が広まり、そこの生態系が外来種を組み込んだ状態で回り出す例もある。しゃくし定規でとにかく駆除すると、食物網にもう一度大きなインパクトを与える可能性もあり得る」と話し、科学的シミュレーションの必要性を指摘した。

 外来種をめぐり、参加した男子児童が「もともと、人間が入れたもの。それを人間が殺すのはだめではないですか」と質問。

 石垣島北部でイグアナ駆除活動を展開する八重山ネイチャーエージェンシーの高木拓之氏は「命を奪うのは非常に荷が重いが、人間が入れたものは人間しか駆除できない」、太田教授は「それは還元論。外来種はいたら困るから殺すのであって、処罰で殺すのではない」とそれぞれ答え、環境省と文部科学省が連携した生き物学習の体制構築を注文した。

 WWFジャパン・トラフィックによると、南西諸島固有の両生類・爬虫(はちゅう)類67種・亜種のうち、55%にあたる37種が国内外の市場で活発に取引。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで新たに評価対象になった日本固有の爬虫類のうち、3分の1が絶滅の恐れが高いとされている。

 ■固有種の特性など説明 太田英利教授が講話

 8日に開催されたいきものトークカフェでは、兵庫県立大学自然・環境科学研究所の太田英利教授が「人間活動が損なう、生き物にとっての琉球の島嶼性」と題して講演した。固有種の話題性を「そのエリアの歴史的な出来事を反映するから」と述べ、「われわれの活動で失われつつあるのか、それをどう考えればよいのかを考えたい」と提起した。

 講演では、大陸から孤立した島が生き物にとって果たす機能として▽新固有種の形成の場▽遺存固有種の形成の場▽極端な環境への適応進化の場―の3点を解説した。

 国内固有種のヤエヤマセマルハコガメやヒメアマガエルを例に、同じ種類を各島間で持ち運んでしまうことで種が交わり、島独自の遺伝的性質が変わりつつある点を指摘。

 「こういった遺伝的浸透は生き物自体はいなくならない。中身だけが少しずつ変わっていく。世界的な問題でもある」と危惧した。

 また、西表島に唯一生息するイリオモテヤマネコの特性について「圧倒的に両生類を食べる点」を挙げ、島で近年、ネズミが増加している現象を生物多様性の一つの喪失として、「スペースの狭い島では、人間のかく乱による環境の変化は起こり得る。十分に気を付けてほしい」と話した。


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