世界自然遺産への登録を目指している「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について、政府は1日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に申請していた推薦書をいったん取り下げることを閣議了解した。5月にユネスコの諮問機関、国際自然保護連合(IUCN)が推薦書の抜本的な見直しを求める「登録延期」を勧告したため、政府は来年2月に再申請し、最短で2020年夏の登録を目指す。取り下げの正式決定を受けて、西大舛髙旬竹富町長は「これからが大事。(登録までの期間が)延長したことで、しっかりと課題に取り組みたい」とコメントした。(3面に関連)
IUCNは5月4日(現地時間)、西表島の北部と北西部にある重要河川流域を編入することや、主要観光地の適切な観光管理計画の実施を求めて、4段階評価で下から2番目となる「登録延期」を勧告。
推薦地にいるイリオモテヤマネコなどの希少動物の多様性を評価した一方で、飛び地が多く、遺産価値の一体性が確保されていないと指摘。沖縄本島の北部訓練場返還地の追加も求めていた。
推薦書は、6月24日~7月4日に中東のバーレーンで開かれるユネスコの世界遺産委員会で審議される予定だったが、政府は厳しい指摘を受ける可能性が高く、いったん取り下げた上で再申請するほうが、早期登録につながると判断した。
政府は今後、勧告内容の綿密な分析を進めるとともに、IUCNのアドバイスなどを受けて推薦書を見直し、早ければ19年2月1日までに再申請する。
西大舛町長は1日午前、取り下げ了解を「決まったことは粛々と受け止める。推薦を取り下げて再提出も選択の一つだ」と冷静に受け止めた。
今後の課題については「ガイド認定の問題や動植物、ヤマネコの保護、入域客の規制も含めた見直しが必要」と述べ、昨年、遺産登録に関する地域住民アンケートで明らかになった地域と行政間の温度差に「地元賛成者が少ないというデータを精査して、反対住民の意見を拝聴していきたい」と町民との対話を重ねる意向を示した。
政府は17年2月、4島は地史を反映した独自の生物進化が見られ、生物多様性の保全において重要な地域であるとして、世界自然遺産登録への推薦書をユネスコ世界世界遺産センターに提出していた。