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おもと・開南地区の意見交換会は成立したか

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 ■道切り

 八重山には「道切り」という言葉がある。首里王府の開拓政策によって新村を建設するため、村人を強制的に移住させる際、道路を境に移住する人たちを決めたというのがその意味だ。「道切り」が言い渡されると、いくら嘆願しても許されなかったという。

 その悲劇が、有名な野底マーペー伝説や民謡の「ちぃんだら節」「崎山節」を生んだ。崎山節の「雨ならば蓑笠を着て防げるが、国王の命に逆らうことは出来ない」という悲嘆や怨嗟の歌曲は人々の魂を揺さぶる。

 それは、遠い過去の物語や歴史の世界かと思えば、現実問題として目の前でくり広げられている。陸上自衛隊のミサイル基地建設計画がそれだ。

 防衛省は、都合の良い場所を選定、勝手に図面を引き、昨年、配置図案を示した。地域住民にとっては青天のへきれきだった。住民説明会でも、防衛省は、住民が懸念する質問には曖昧な回答を繰り返した。

 中山石垣市長は2016年12月、「配備に向けた諸手続きを開始する」と事実上配備受け入れを表明した。基地予定地近隣の4公民館が抗議するなか、防衛省は18年度予算に136億円を組み、4月には市に配備に係る調査のため入札公告を行いたい旨を伝達し市長も了承した。

 市民団体の抗議に漢那副市長は「市長は配備に向けた諸手続きを開始することを了承している。配備を容認しているわけではない。入札・公告は手続きをするための調査、測量は手続きの範囲。測量しないと面積も工程も分からないから承認した」と回答している。

 ■容認ではない?

 市長が配備を容認しているわけではないといいながら、測量をしないと範囲も面積も工程も分からないと、沖縄県の土木部長を務めた漢那副市長が言うのは詭弁(きべん)としか思えない。防衛省の入札・公告は土地買収のための測量である。基地建設を容認しているからこそ手続きの一環として入札を行うのだろう。

 配備計画ありきの手続きが進められ、具体的な計画が動きだす段階になって、市は9日、突然「おもと、開南地区住民を対象とした陸上自衛隊配備計画に係る地域住民との意見交換会」の文書を、於茂登公民館、開南公民館の頭越しに地区住民に配布した。4地区公民館はこれに強く抗議した。

 ■集落分断の懸念

 内容は、話し合いの前提として、手続き開始了承を撤回することであり公民館の頭越しの開催は小さな地域の分断を招くというもの。意見交換会が、「住民の声を聞いた」という既成事実に利用されかねないと怒りをあらわにし、市全体の問題だと提起した。

 しかし、市は16日、抗議を無視し、大本小学校体育館での開催を強行した。ただ、出席した住民はわずか7人だけ。意見交換会というにはあまりにもお粗末で、住民との意見交換会の成立とは言い難い状況だった。

 中山市長は、出席者から弾薬庫などの配置や水源への影響について問われ、「意見交換会は、こういう意見を防衛省に伝え、確認作業をするため」と述べた。

 反対する住民との意見を聞く場も設けたい、嵩田、川原地区住民を対象とした意見交換会も近く開催したいというが、このまま開催を強行すれば同じことの繰り返しだろう。

 新石垣空港建設問題で、住民間の対立を招いた白保より集落が小さいだけ、今後深刻な問題に発展するのではないかと危惧する。

 住民の抗議や反対を無視して進められている計画は、現代版「道切り」ではないか。悲劇の再来は許されない。


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