■石垣に自衛隊は必要か問う
4日に告示された石垣市長選は、11日の投開票に向けて早くも中盤戦に突入した。今回の選挙はこれまでの保・革一騎打ちの戦いとは様相を異にして保守分裂による三つどもえの激戦となっている。
立候補しているのは届け出順に革新系新人で前市議の宮良操(61)、3期目を狙う保守系現職の中山義隆(50)、中山氏の市政運営に反発する市議らが担ぎ出した前自民県議で新人の砂川利勝(54)の3氏。
中山市政の2期8年の評価と誘導弾部隊を装備する自衛隊の必要性や経済振興、子育て支援などが争点。
中でも今回は石垣の風景と未来を大きく変える陸自配備が最大の争点だ。出発式で宮良氏は「子や孫らに平和な島を」、中山氏は「あと4年、力を貸して」、砂川氏は「陸自配備は住民投票で」とそれぞれ訴えたが、3万8000人余の有権者は3氏のうち石垣の未来を誰に託すのか、政策や政治信条などをしっかり吟味し判断してほしい。
■三者三様のスタンス
3氏の政策は既に新聞紙上で公表されており、三者三様の政策を見比べて投票の参考にしていただきたい。
今回の選挙では中山市政の評価も大きな争点だが、宮良氏は「中山市政は市民でなく国に向いている」、砂川氏は「今は市民との対話が欠け、学校環境整備などの課題が浮き彫りになっている」とそれぞれ批判。これに対し中山氏は「観光を中心に経済が伸びた」と2期8年の実績を強調する。果たして有権者の評価はどうか。
最大の争点の自衛隊配備については、宮良氏が明確に反対し、砂川氏は配備を推進しつつ「住民投票で決める」とするが、中山氏は配備に理解を示しつつ最終判断は選挙後に先送り、という三者三様のスタンスだ。
■知事選に連動の市長選
今回の選挙では、所属市議2人が自衛隊反対を表明していた公明党の対応も注目されたが、最終的には「自らは誘致しない」とする中山氏を推薦した。
現段階で配備を拒否する可能性が少ない中山氏を推薦した公明や、最終判断を先送りした中山氏の選挙対応を有権者はどう見るのかも注目される。
選挙結果は秋の知事選に連動し、辺野古や自衛隊の行方も左右する。
そのため保守分裂の中山氏の出陣式は、一市長選と思えないほど危機感あらわに自民党や公明党、日本維新の支持政党幹部や国会議員、県内保守市町長らがずらり顔をそろえた。今後も大物を投入して総力戦の様相だ。さらに告示日には、幸福実現党も中山氏を推薦した。幸福が県内首長選で推薦を出すのは初めてのことで、保守勢力が結集した。
これに対し「オール沖縄」勢力が支援する宮良氏の陣営も、小池晃共産党書記局長や伊波洋一参院議員らが応援に入り、出発式には翁長雄志知事も駆け付けた。負ければ革新陣営の今後を左右し、知事選にも影響するだけに危機感は強い。一方砂川陣営は現職に反発する反中山票に期待する。
石垣市は自衛隊問題以外にも子どもの貧困や北西部地区活性化、観光産業の質への転換、自然環境保全、非正規労働者雇用や人手不足対策など課題は多い。そういう石垣市の未来を誰に託すのか、しっかり見極めたい。