ハタ科のナミハタ(サッコーミーバイ)は、5月の産卵期になると、普段生息する海域から産卵場に移動して産卵を終えた後、また元の場所に戻っていく—。小浜島と西表島の間にあるヨナラ水道で産卵海域の保護効果を検証している西海区水産研究所亜熱帯研究センターと長崎大学環東シナ海環境資源研究センターが、超音波による発信器調査でナミハタに帰巣性があることを突き止めた。
オスが10日間、産卵海域にとどまることも分かり、西海区の名波敦主任研究員は「産卵場での漁獲自粛の期間設定も、オスの行動特性に合わせることが望ましい」と指摘。八重山漁協は4~5月の禁漁期間を去年の6日間から10日間に拡大し、2回にわけて実施する予定だ。
ナミハタは、産卵期に特定の海域に集まって産卵する「産卵集群」を形成することから、大量に漁獲されやすく、資源量は減少傾向。このため漁協は、高密度で産卵集群が形成されるヨナラ水道の一部を禁漁区に設定、電灯潜り研究会が主体となって資源の保護・回復に取り組んでいる。
両研究機関は2011年からナミハタの生態調査を開始。ヨナラ水道の産卵場から5㌔離れた海域にいた30匹(オス9匹、メス21匹)に、超小型の超音波発信器を取り付けて放流。生息海域に受信機12台、産卵場に15台を設置して30匹の行動を追跡。
4~6月までのデータを集めた結果、すべてのオス、産卵の準備ができたすべてのメス16匹が産卵海域に移動したことが分かった。オスは10日間、メスは4日間、滞留した後、生息海域に戻った。
産卵場に集まってきたナミハタが産卵後にどこへいくのかはこれまで謎に包まれていたが、今回の調査で元の場所に戻っていく帰巣能力がかなり高いことが分かったという。
名波主任研究員は「産卵場でナミハタをしっかり守った後、産卵期の後に漁業者が各自の漁場でナミハタを漁獲するほうが、資源の枯渇を防げ、漁獲量や価格が安定すると考えられる」としている。