政府が2018年夏の世界自然遺産登録を目指す西表島などの推薦候補地「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の国際自然保護連合(IUCN)による現地調査が20日、終了した。環境省と林野庁などは同日午後、国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターで記者会見し、林野庁九州森林管理局の林視(のぞむ)部長は「国有林の価値や保護管理の取り組みに対して一定の理解を得られたと考えている」と手応えを示した。今回の調査結果を踏まえ、来年7月ごろに開催予定の世界遺産委員会で登録可否が決まる見通し。
現地調査は11日から10日間の日程で行われ、IUCNから派遣された同世界遺産科学アドバイザーのバスチャン・ベルツキー氏、同アジア地域事務所アジア資源グループ長のスコット・パーキン氏が全推薦地を視察した。
両氏は17日から19日まで西表島に滞在、島の固有種である両性爬虫類の夜間観察、国の特別天然記念物イリオモテヤマネコの生息域とされるマングローブ林を視察したほか、ヤマネコの交通事故防止策、特定外来種シロアゴガエルの侵入監視状況や駆除活動などの説明を受けた。
19日には非公開で地元関係者との意見交換会が開かれ、行政や島内3公民館長、西表部会のメンバーら40人余が出席した。
出席者によると、地元側からは観光客の増加や町インフラへの過重を懸念する声が上がり、IUCN側からは「登録自体がゴールではなく、スタートライン。しっかりと課題に取り組むことが重要」との指摘があったという。
同省那覇自然環境事務所の西村学所長は、両氏が顕著で普遍的な価値(OUV)の自然が守られてきた背景に関心を示し、「(自然保全の背景として)地域の文化や歴史も併せてPRしてはどうか」とのコメントもあったと明らかにした。
県環境部の大浜浩志部長は今後、IUCN側から課されるであろう宿題として「西表島は来島者増加に伴い、観光業者間の利用ルール策定が必要となる。また(沖縄島北部との)両地域で希少種のロードキル対策も重要な課題」と述べた。
竹富町政策推進課の通事太一郎課長は現地調査終了にひとまず安堵(あんど)した表情を見せ、「今回目指す登録には意義がある。将来にわたり島の自然利用の規制・仕組みを整えることができる。(登録可否が決まる)来年夏までに宿題への解答も含めて、県と調整しながら自然保全へのルール策定に取り組みたい」と話した。