■八重山は県内最高の求人
県内の雇用情勢が好調に推移している。特に6月は有効求人倍率が1.01倍となり、本土復帰後初めて求人が求職を上回る1倍を突破。さらに完全失業率も4.6%で前年同月から0.5ポイント改善した。
八重山も2013年3月の「南ぬ島石垣空港」の開港以来、好調な観光に支えられて有効求人倍率は1倍超えが続いており、6月は宮古の1.22倍、那覇の1.13倍をしのぐ県内最高の1.29倍を記録した。
沖縄労働局は今後も県内の労働市場は好調に推移するとみているが、一方で新規求人に占める正社員求人の割合が29%と3割にも満たず、相変わらず「雇用の質」改善が大きな課題となっている。
そこで注目を集めているのが安倍首相が「改造内閣の3年間の最大のチャレンジ」として1億総活躍社会プラン実現に向けて打ち出した「働き方改革」だ。
■働き方改革で非正規一掃
同改革で安倍首相は野党の専売特許だった「同一労働同一賃金」も政策に取り入れ、「非正規という言葉をこの国から一掃する」と高らかに非正規雇用の待遇改善を宣言。さらに長時間労働の是正、高齢者の就業促進、柔軟な働き方推進|を改革の柱に打ち出した。
ただ同改革には、企業優先の安倍首相が昨年の国会で同一労働同一賃金法案を骨抜きにして企業に有利な生涯派遣社員の労働者派遣法改正案を強行成立させた例があるだけに野党側から懐疑的な見方がある上、政府内にも戸惑いがあり、実現は不透明というのが現状だ。
しかし一方で、非正規労働者の生活底上げによる消費拡大で「名目国内総生産600兆円」を目指し、今回強引に“政治介入”して今年の最低賃金を過去最大の平均24円(沖縄は21円アップで時給714円に)も引き上げたように、有言実行のリーダーシップ演出にも力を込めているため、ある一定の期待感もある。
■移住・定住も雇用がカギ
沖縄は非正規労働者が44.5%と全国ワーストであり、15〜34歳の青年層では50.4%と2人に1人が非正規だ。安い賃金と不安定な待遇で将来の生活設計ができないため、結婚や出産に影響し、これが深刻な「子どもの貧困」にもつながっている。
石垣市は去る3日、移住・定住促進による人口増を目指し、協議会を発足させた。その移住・定住もカギを握るのが雇用問題だ。2005年から2008年にかけて石垣市は、「幽霊人口が5000人もいる」と誇張されるほどの移住ブームがあった。それが長続きしなかったのは物価や家賃は高いのに、賃金が安く雇用が不安定なことも要因だった。
移住・定住支援で人口増を図るため、さらに現在の求人増による人手不足や深刻な「子どもの貧困」も非正規雇用など低賃金の不安定な就労が根本にあり、正社員化や待遇改善など「雇用の質」向上でこれらの問題を解決するため、石垣市も労働行政に力を入れるべきだ。