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「沖縄戦」どう伝えるか

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■戦争の足音近づく

 今年も23日の「慰霊の日」を前に郡内の各小中高校で平和学習が開かれている。同学習で八重山平和祈念館を訪れた学校も多いだろう。

 しかし戦後70年、沖縄で20万人余、日本全国で310万人余が犠牲となった戦争の傷痕は年々風化が進み、全国的に保守化・右傾化が進む中、「戦後レジームからの脱却」を引っ提げて好戦的な“モンスター”も登場。沖縄戦体験者たちが「近頃また怖くなってるよ」というように、これまで70年間憲法9条で守り通してきたこの国の平和は再び赤信号がともり始めている。

 各種世論調査を見ると、高齢者の多くが安倍政権の「安全保障関連法案」に言い知れぬ不安と拒否感を感じているが、若い人たちは無関心が多く危機感は薄いようだ。それはなぜか。

 それは戦争を知らない戦後世代が人口の大部分を占めて平和教育の発信力が年々低下する中、安倍首相をはじめ中央、地方の政治家もかつての戦争の狂気と悲惨さ、むごさ、悲しさを実感できない、あるいは「想像」できない人たちが増えているためだろう。

■今こそ大切な平和学習

 それは日本で唯一の地上戦を体験し全国の中でも平和希求への思いが最も強い沖縄でも言える。高教組などが今年5月に県内の高校2年生を対象にした意識調査で、今年が沖縄戦終結70年と答えられたのは54.7%で5年前の65年より16.1ポイント減り、米軍普天間飛行場の県外・国外移設が前回より12.2ポイント減の34.6%となったことでそれは十分うかがえる。

 ただ沖縄戦について学ぶことには、94.1%が「とても大切」「大切」と答え、これまでの平和学習についても86%が「良かった」「とても有意義」と評価は高く、共に過去最高となった。

 沖縄も「沖縄戦」を知らない世代が大部分を占め、右傾化と保守化が進む今の時代だからこそ平和学習がより大切であり、もっと充実強化すべきだ。ただ学校現場では、教師自身がすべて戦争を知らない世代だけに、どのように平和学習を展開するのか苦悩も大きく、その支援が大きな課題だ。

■「八重山戦争日誌」も教材に

 県教育委員会は戦後70年を節目に、県内の戦争遺跡を文化財に指定する作業に着手した。八重山でも石垣市が崎枝の電信屋と戦争マラリアの名蔵白水を文化財に指定しているが、戦争遺跡はまだまだ数多くあり、文化財指定して平和学習をより充実させたい。

 さらに本紙で3月から連載中の「戦後70年八重山の戦争日誌」(大田静男氏)も平和学習用に教材化したい。八重山にもこのように悲惨な戦争があったことを日を追ってリアルタイムに克明に記録した資料はかつてない。

 戦争体験者の語り部が毎年少なくなっていく中、新たに島尻優楓さん=八重高2年=と嶺井千裕さん=八重農2年=の高校生平和ガイドが誕生したのは喜ばしいし頼もしい。悲惨な沖縄戦の実相を次世代に伝えるには若い人たちの関心をどう高めるかが課題。高校生だけでなく幅広い年代層のガイドを次々育成。世界平和希求への熱い思いを発信し、沖縄・先島を日米の軍事要塞(ようさい)でなく、平和のとりでにしたい。


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