■石垣市には1213人も
日本は今、認知症が大きな社会問題になっている。10年後の2025年には認知症が高齢者の5人に1人の700万人に達するとの推計も発表され、政府も今年1月、省庁横断の「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を決定。「今や認知症は一般的な病気であり、認知症の人がより良く生きていけるような環境整備が必要」として対策に乗り出した。
一方石垣市でも、現在全国的に問題になっている認知症高齢者が行方不明になった場合、市の地域包括支援センターが警察や消防、コンビニなどに情報を提供し、連携して迅速に捜索に当たる「認知症SOSネットワーク」が去る4日に発足、地域で見守る支援体制ができた。
石垣市には現在、認知症として介護認定を受けているのは1213人もいるという。これは石垣市の65歳以上高齢者の約15%前後に当たり、高齢になるにつれてその数は増えるという。
神経細胞などの減少で脳の働きが低下する認知症の症状は、物忘れから家の中や外を歩き回るはいかい、不眠・昼夜逆転、幻覚・錯覚、暴言・暴力、自傷、失禁、妄想、異食・過食、便をいじる弄便など患者の数ほど症状は多岐にわたり、それだけ患者の家族は介護の苦悩、負担が多いことになる。
■国も国家戦略で対策強化
そのため国の新オレンジプランは▽認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリモデル、介護モデル等の研究開発およびその成果の普及推進▽適切な医療・介護の提供▽介護者への支援|など七つを柱に対策を推進。最終的には「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を目指している。
一方石垣市も、高齢者福祉計画(21パールプラン)で認知症を重要施策の一つに掲げて予防対策を進める一方、介護者支援のためサポーター養成講座や研修会、講演会の開催、認知症初期集中支援チーム設置などの取り組みを展開しているが、さらに今回新たに行方不明の認知症高齢者を迅速捜索する「SOSネットワーク」を設立した。
■人ごとでない認知症
認知症は根治は難しいが、薬物で進行を抑えたり、症状に合わせたケアで改善は十分可能という。そのためまず予防対策と早期診断、早期対応が重要だ。特に原因不明のアルツハイマー型と脳梗塞などによる脳血管障害型のいずれの認知症も、動脈硬化が影響しているといわれており、予防の鍵は高血圧や糖尿病、コレステロールなどの生活習慣病対策にあるといえる。
本人が気づかぬままさまざまな症状を発症し、本人と介護の家族に言い知れぬ苦痛と負担をかける認知症は、医師らから「がんになるのも嫌だが、認知症になるのはもっと嫌」といわしめる難病だが、10年後は高齢者の5人に1人が発症するということであり、これは決して人ごと、よそ事ではない。
それだけに石垣市などの行政はさらにきめ細かな対策を講じ、認知症患者やその家族にだけ介護や経済的な負担を抱え込ませないよう、地域で支える支援体制を早期に築く必要がある。