■中山市長、配備調査に理解
1972年5月15日、沖縄の施政権がアメリカから日本に返還されて43年目を迎えた。平和で基地のない島を目指して米国統治からの脱却という県民の願いは裏切られ、43年目にして、ついに防衛省は 先島に軍隊配備を明言した。
11日、台風6号接近のなか左藤章防衛副大臣が宮古、石垣島を訪れ、宮古島へ700~800人の自衛隊を配備する計画を下地宮古島市長に打診し、石垣市の中山市長にも自衛隊配備に向けた調査実施に理解を求めた。
自衛隊配備について左藤副大臣は中国脅威論を背景に、島への攻撃の抑止力と、災害時に自衛隊が迅速に対応できることなどを理由に挙げた。中山石垣市長は「国防や安全保障は国の専権事項であり、調査への協力体制をとっていきたい」と理解を示した。
国防が国家の専権事項であれば、何でも従うのであろうか。地方公共団体には国家と違う市民レベルでの平和や安全施政を考えるべきだ。軍隊が配備されている基地が真っ先に攻撃されるのは軍事上の常識であろう。
抑止力とか災害時の迅速な対応などというが、「沖縄県国民保護計画」の「離島における武力攻撃事態等への対処」によれば、戦争が始まれば離島住民は、船舶や飛行機で九州へ避難することになっている。だが戦争が始まれば、空港や港湾が標的となるのは当然であろう。沖縄戦は如実にそれを示している。防衛省の言いなりになって市民の生命、財産が守れるか疑問である。
■石垣にもミサイル配備
左藤副大臣は自衛隊配備に向けた調査実施に理解を求めただけで、候補地や部隊規模は決まっていないと述べている。だが、防衛省は石垣島には地対艦ミサイル(SSM)、地対空ミサイル(SAM)部隊、350人を配備する方針でといわれる。
島しょにおいて、戦争が始まれば、市民が戦禍に巻き込まれて多くの犠牲者を出すことだけは間違いあるまい。それだけに、市長は慎重になるべきで、安易で軽佻(けいちょう)浮薄な発言は市民にとって迷惑この上ない。
市議会の与党系議員が防衛議員連盟を2月に発足させ、自衛隊の配備計画に理解を示し推進するという。市議による国策先導である。地方議会の目的は国家の目的を推進することではない。憲法や石垣市市民憲章をいま一度かみしめるべきだ。
■沖縄・先島が国防の最前線に
14日に安倍内閣は、憲法破壊の「戦争法案」ともいうべき「国際平和支援法」と「平和安全法制整備法」を臨時閣議決定し、きょう国会に提出する。自衛隊が海外で米軍と協力して武力行使ができる法案で、首相は米国議会での演説で今国会で法案を成立させると明言している。危険極まりない法案だ。
先に中谷防衛大臣は翁長知事との会談で、沖縄の米軍基地や駐留の重要性を説いた。日米安保体制が強化される度に沖縄基地の危険性はますます高まる。日本が再び戦争する国となり沖縄、八重山はその最前線に再び立たされる。名護市辺野古の新基地建設にみる政府の傲慢(ごうまん)、冷淡な強行姿勢で沖縄と日本の溝は深まり乖離(かいり)していくばかりだ。