先日、「夢は牛のお医者さん」という映画を見た。新潟の過疎の町で、廃校寸前の小学校に「新入学生」として入学した子牛を児童が育て、その中の女子に芽生えた獣医師への夢を追いかけた映画▼一人の女子を20年余も撮影し続けたものだ。動物にかける深い愛情と、経済動物としての理解など、相反する畜産教育を見事に描いていた。先行の宮古島上映で好評だったと聞いており、観賞後は爽やかな気分▼ところが八重山の現実は厳しい。牛の数は約3万頭で、県内の畜産どころとして知られているが、そのお医者さんがなかなか育たない。八重山獣医師会には35人の会員がいるが、純粋の地元出身獣医師はわずか3人。移住して開業している人が2人、残りの大半が県や団体勤務▼医学部と同等の難しさのため入学試験になかなか合格しない。現在、男女2人が難関を突破、資格取得を目指して大学で勉強している▼この状況はなにも畜産だけではない。13日の本紙に琉大医学部に離島・北部枠で2人が合格したと載っていた。関係者間では、宮古地区の学力が高く、枠を独占する可能性があるとの危機感もあった▼学校でも、地元出身の教師が少なくなった。採用試験に合格しない。事態は深刻だ。学力向上、人材育成は当然のことだ。親は子どもに対し、夢と目標を持たせてほしい。(黒島安隆)
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