【西表】26日未明に西表島高那地区の県道で保護されたイリオモテヤマネコの幼獣について、環境省西表野生生物保護センター(福田真自然保護官)は9月にも野生復帰させる方向で検討している。同幼獣は頭付近のかすり傷や血液検査の結果から交通事故に遭ったとみられ、現在は回復に向かっている。放獣が成功した場合、交通事故からの野生復帰は初めてとなる。
同センターによると、野生生物を交通事故で保護した場合、3日間の経過を観察して今後の対応を検討するが、この幼獣は骨折など大きな外傷もなく回復に向かっているため、野生復帰の可能性は高いとみている。
これまで衰弱した状態で保護されたイリオモテヤマネコが野生復帰した事例は過去に3例あるが、交通事故から復帰した事例は無い。
1996年に交通事故に遭い、保護された「よん」(オス)は、後遺症で野生復帰が困難と判断され、同センターでヤマネコの研究や啓発を目的に14年8カ月飼育し、11年4月に死んでいる。
今回保護されたメスの幼獣は保護当時、瞳孔の開きが左右で異なり、頭を打っている可能性が高かったため、同センターが経過を観察。28日までに「元気になってきている」(福田保護官)という。
福田保護官は「順調に回復してくれれば来週には野生復帰できるのではないかと考えている。交通事故で保護されて、野生復帰するのは初めての事例だ」と順調な回復を喜んでいる。
また、野生生物の放獣場所は通常だと保護地点の付近だが、同幼獣は目撃情報が相次ぐ中で事故に遭っていることから「車や人に慣れてしまった可能性もあり、放獣場所を専門家と協議する必要がある」と述べ、慎重に検討する考えを示した。