■好調な観光だが
沖縄県八重山事務所の発表によると、本年5月度の入域観光客数は前年比46%増の10.4万人を確保、5月までの累計では前年比30%増となり、このまま推移すると単純計算で目標を大きく上回る120万人に届く勢いとなっている。
沖縄県全体も好調で、前年比12%の伸びとなっているが、八重山エリアはまさに別次元の勢いといえる。
躍進の原動力は八重山観光の魅力に加え、行政や業界の継続的な努力や新空港の開港によって路線や機材の拡充、格安航空会社の新規参入により、航空運賃低減が実現したことが大きいが、航空情勢や受け入れ不備によっては大きく変わる恐れが出てきた。
■航空競争激化
規制緩和によりJAL、ANAに続く第3勢力としてスカイマークが石垣空港にも就航したが、大手航空会社やLCCとの競争激化で苦境に立たされている。一度経営破綻したJALは政府主導で再建に成功し、昨年度の売り上げは1兆3093億円、純利益は1662億円となり、ANAの売り上げは1兆6010億円、純利益は188億円の黒字を確保した。
スカイマークの売り上げは859億円だが、競争激化により18億円の赤字に転落し、本年4月から6月までの決算では55億円の営業赤字という。エアバス社の超大型機発注をめぐるトラブルも発生し、「企業存続について、重要な疑義が生じている」と表明した。
航空は沖縄本島や本土への交通手段として唯一のものであり、航空運賃の低減は新空港問題と共に長年の悲願であった。行政や地域が要請し続けた割高な航空運賃低減(那覇まで片道25800円)もスカイマークの新規参入による競争で一気に解決、5000円前後に低下し、八重山観光活況の要因となっている。「ユニットコスト」は旅客一人を1㌔運ぶのに要する総費用の単位だがANAで13円、JALで11円、スカイマークで8円、ピーチで6円という。那覇までの距離が401㌔とすれば高くても5213円程度がめどとなる。スカイマークが路線から撤退すれば法外な割高運賃が復活し、観光客は激減、離島住民の生活や産業が大きな打撃を受ける。
■行政や議会の出番
スカイマークは企業の存続をかけて不採算な地方路線から撤退することを視野に入れる意向と伝えられている。石垣市や議会は、他市町村や沖縄県と緊密に連携し、低額運賃を守るため、スカイマークへの支援活動や、支援策を推進する必要があるのではないか。支援にはJALなど前例もあり、大手による新参企業へのいじめともとれる過度な価格競争是正も課題だろう。
また、八重山ビジターズビューローの川平湾、底地ビーチ、米原海岸、平久保崎など観光地の管理状況調査によると、トイレなどの使用不能、清掃の不備など維持管理が不十分と指摘され、観光客の不満が高まっている。観光客150万人時代に向け、イベントや誘客活動は観光協会など民間に委託を進め、行政はインフラ整備、航空路線維持展開などの交通政策、消費額や顧客満足度を高める政策に転換する必要がある。