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どう保全する宮良殿内

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■八重山の上流士族の建造物

 新石垣空港の開港によって、観光客が急増し、昨年は94万2964人と過去最高を達成した。今年も今のまま推移すれば100万人に達することは確実であろう。

 それに伴い観光地の整備、管理は急務であろう。八重山を代表する観光名所に宮良殿内がある。1819年ごろに家屋や庭園が造られたといわれる。

 1972年、宮良殿内は王府時代における八重山の上流士族の建造物、庭園等をはじめ、八重山社会を知る上でも重要であるとして、家屋(建造物)、庭園(名勝)ともに国指定重要文化財となった。

 その庭園で、土砂の流失や作庭時には低木であったと思われるフクギやイヌマキ、ツバキなどが成長し、樹根によって石垣や庭園の石が浮きあがるなど状態が悪化している。

 

■保全状態悪化し景観損ねる

 築山や立石、景石は長年にわたる台風や大雨など自然災害を受けて、土砂流出や地層の沈下が進んでいたが、ここ数年、急速に進み、数年前には枯滝の立石が倒れ修復された。滝石や景石など、全体的に土が洗われている感は否めない。

 宮良殿内は道路より低地だが、庭園の下には自然洞窟があるといわれ、雨水は自然にできた排水口から地下の洞窟へ流れるため、水害の影響はないが、その排水口が近年増減し、また、排水口が大きくなり、庭園の景観を損ねている。

 土砂の流失は以前から指摘され、往年は、正月に砂を敷き詰めたが、近年は予算の関係からか、砂をまくこともなく、そのため、流失した土砂の分を埋めることができないというのが関係者の話だ。そのため、庭園につらなる母屋の犬ばしりの縁石(桂石)も底部まで洗われている状態だ。

 植栽の剪定(せんてい)や整枝もなされず、自然まかせで伸び放題である。これでは、「日本最南端で、日本庭園の流れを知る上で貴重であるばかりではなく、近世沖縄の上流階級の庭園造りを最もよく伝えるもの」という文化財指定理由が泣くとい指摘も当然であろう。

 たしかに、築山の石組みの土流失や、植栽の成長したフクギ等の巨樹や、かって植栽されていた植物の復活等その対策は難しい課題もあろう。だが、避けて通るべきではない。

 植栽の剪定については、管理人の手には負えないだろう。樹種の種類によって剪定時期や方法が異なるためだ。また、施肥や害虫などの消毒も専門家によってなされるべきだろう。

 

■周辺の景観とどう調和

 ところで庭園外の建築物による文化財庭園の景観阻害は、全国的に問題となり、東京都は景観条例を1997年に公布した。そのなかで、景観上重要な歴史的建造物等に指定した文化財庭園の周辺100㍍の範囲内で建築行為を行う人を対象とした歴史的景観保全のための配慮の指針を作成し、景観も重要視している。

 開発行為によって庭園景観への影響が懸念されることを考慮すれば、当然、開発行為者と所有者間の事前協議や協力要請が必要であることはいうまでもない。

 庭園は自然景観を凝縮し象徴化したものである。その景観構成が宮良殿内庭園では損なわれている。隣接した建築物の2階に描かれた赤や緑など原色のマークが視界に飛び込み、景観や雰囲気、が損なわれ、観賞者からは不満の声が寄せられている。石垣市と建築者の協議はあったであろうか。植栽等による対策を講じ、景観を取り戻すことが求められる。

 庭園を管理保存していくには「文化財指定庭園の保存管理計画」等が必要であろう。八重山の誇るべき貴重な遺産である宮良殿内庭園を保護し次世代へ伝えていくのは私たちには課せられた義務である。


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