新海誠監督のアニメーション映画「すずめの戸締まり」の舞台なのではないかと、宮崎県日南市が話題になっているそうだ。5日付の「琉球新報」が、九州・沖縄県紙合同企画「物語の舞台」で「宮崎日日新聞」の記事を掲載していた▼同市職員が探したところ、映画の光景に近い場所が3カ所あったという。油津(あぶらつ)の住宅地や港、南郷団地から望む港町などである。「いったい、どこの話か」と、八重山の読者の多くは首をひねるかもしれない▼与那国島久部良で手広くかつお節製造を行った人物に発田貞彦(1895―1971)がいる。「発田」の本来の読みは「ほった」だが、島では「はつだ」で定着している▼その出身地の目井津(めいつ)は、合併によって現在は日南市の一部となっている旧南郷(なんごう)町にある。日南地方には油津、大堂津(おおどうつ)、目井津という具合に港が並び、この地域の漁業は「日南かつお一本釣り漁業」として2021年2月に日本農業遺産に認定された▼久部良は大正期から昭和初期にかけてカツオ漁やかつお節製造の拠点として地歩を固めていく。その立役者のひとりが、カツオ漁で名の通った地域の生まれなのである▼与那国と日南はもともと黒潮で結ばれている。百年ほど前につながれたかつお節の道を、注目のアニメ映画が思い出させてくれた。(松田良孝)
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