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石垣島侵攻分析文書の恐怖

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 ■空白恐怖症

 今年度の『大辞泉』の新語大賞に「空白恐怖症」が決定した。「自分の仕事がないときにあたかも仕事をしているようにみせるためにダミーの予定やフェイクの予定を入れるほど自分の予定が空白なことを恐れること」が選定理由である。

 「空白恐怖症」は防衛省にも当てはまるのではないか。尖閣諸島中国漁船衝突事件を契機に中国脅威論をふりまき、南西諸島の軍事的空白地帯があってはならないと、平得大俣への陸自配備計画にまい進しているのがそれだ。

 防衛省が石垣島侵攻を想定した分析を、2012年に行っていたことが、共産党の赤嶺政賢衆議院議員が入手した文書で判明した。離島奪回作戦や、やまざくら作戦などで石垣島侵攻作戦が自衛隊や米軍の合同作戦によって行われていることは知られていたが、赤嶺氏の入手した文書により具体的な戦闘の想定が明らかになった。

 防衛省は島しょ奪回作戦を分析して、奪還に必要な戦力をはじきだし、現行の防衛計画大綱と中期防衛計画に反映したようだ。

 分析によると、石垣島侵攻以前に配備された自衛隊普通科連隊2000人に対し、敵4500人規模の海空戦力が上陸し、島内6カ所で戦闘が行われ、両方の残存率が30%になるまでの兵力数を試算している。

 陸自配備については500~600人程度と沖縄防衛局は説明していたが、分析では2000人が配備されているとの想定だ。

 ■石垣島中南部は戦闘地区

 6カ所の地名などは明らかにしていないが、公表された地図から①名蔵、嵩田周辺②外山田周辺③大浜、旧飛行場周辺④宮良後方から新空港周辺⑤真栄里から観音堂にかけての市街地⑥宮良、白保周辺|である。

 戦闘は①~③では自衛隊が優勢だが、④~⑥では自衛隊が劣勢。残存兵力数は自衛隊が538人に対し、敵は2091人で自衛隊は相対的に劣勢に立たされる、との分析だ。

 そのため、自衛隊は、敵の増援部隊が到着するまでに、陸自戦闘部隊を上陸させて優勢に転じ、さらに約2000人増援すれば奪回可能になるという。つまり、双方8000人の兵隊が石垣島中南部で戦闘を繰り広げることになる。

 離島奪還作戦は、自衛隊の陸海空部隊が敵に侵略された離島をミサイルや水陸両車、潜水艦、戦闘機攻撃で奪還する作戦である。戦争が起これば超性能の兵器が飛び交い、市民が戦闘に巻き込まれるのは常識だ。

 しかし、住民保護について防衛省は、自衛隊の主担任ではなく、所要も見積もることができないため評価には含めなかったという。

 ■国民保護計画は虚妄

 各省庁や県、市町村の「国民保護計画」から試算はできるはずだ。自衛隊が優勢と試算したのは農村地帯であり、真っ先に攻撃の対象となる空港、港湾地区では劣勢だ。これでは、沖縄県や石垣市の「国民保護計画」に盛られた島外、県外への疎開は輸送手段の確保が難しく、従来から画餅と指摘されていたことが文書で証明された格好だ。

 赤嶺氏の質問に岩屋毅防衛相は「国民保護に最大の配慮を払いつつ、もし侵攻があった場合に奪回を考えていくことは当然だ」と答弁した。

 「国民の保護に最大の配慮」というなら、主権者である国民の戦時における保護計画を明らかにすべきだろう。「国民の生命財産を守る」というが、自衛隊法103条は、自衛隊が防衛出動時には行動地域(戦闘地域)や予定地の土地、家屋、物資などの収容を規定している。有事の際、はたして住民の生命・財産を守れるのか。


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