■事故続発の普天間所属機
海兵隊普天間基地所属航空機の不時着など事故が頻発している。6日と8日、うるま市伊計島と読谷村にUH1Yヘリ、AH1Zヘリが相次いで不時着した。
米軍は「緊急着陸」あるいは「警告灯点灯のための予防着陸」と説明。事後も一方的に「安全宣言」して訓練を再開させ、県民の怒りと反発を買っている。
これほどまでにトラブルが集中、続発するのは、整備水準やパイロットの技量の劣化が進んでいるからだろう。高江での不時着・炎上も、普天間の保育園や小学校への部品落下も普天間所属機だ。
海兵隊が保有する航空機の深刻な状況が次々と明らかになっている。老朽化や酷使などで保有する機材の約4割程度しか飛行できないこと。
塩害による腐食など条件の厳しい沖縄やハワイの機体を米本土の機体と交換して整備水準を維持する交換計画も明らかとなった。
米国防総省すら昨年末、軍事費減額により海兵隊の整備人員、部品不足に陥っていることを議会で証言している。
県は日米両政府に原因究明までの全機種の飛行停止と、オーバーホール(分解点検修理)による安全整備を求めているが、それとて根本的解決とならない。
海兵隊抑止力論は、もはや虚構である。海兵隊全部隊の国外・県外への撤退を強く求める。
■当事者能力ない日本政府
8日の不時着の第1報に接して、小野寺防衛大臣は思わず「ちょっと多すぎる」と本音を漏らした。ちょっと、どころではない。1件もあってはならないのだ。
これが本土だったら国を挙げて大騒ぎする事態だろう。
県民の反発を避けたい大臣は早速米国防長官や太平洋軍司令官と会談し、安全策の徹底と事故の再発防止を申し入れたが、飛行停止は求めていない。
日米地位協定上、軍の運用はすべて米軍の判断であり、日本政府は口を挟めないのが現実だ。だが、この状況のままでいいのか。これでは何も改善されない。
県の要請はまたも日米に無視され、9日にはすべての機種が飛行訓練を実施した。いつものとおりの不条理。
ただ、今回のトラブル頻発の現実は米側にも衝撃を与えており、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は富川副知事への報告・謝罪で、現状を「クレイジー」と嘆くほどの異常事態だ。米紙も衝撃を伝えている。
事故が繰り返されても米側へ抗議すらできず、「米軍が安全を確認した」との説明をうのみにして恥じない日本政府は主権国家だろうか。
翁長知事はこうした状況に「言葉を失う。政府は当事者能力がないことを恥じてもらいたい」と述べた。その通りだ。
人命にかかわる重大事故がいつ起きてもおかしくない異常事態である。
■八重山も無縁ではない
普天間も嘉手納もキャンプハンセンも、フェンスの外はすべて民間地だ。すべての航空機が民間地上空を飛ばなければ訓練空域に行けない。
今回の事故頻発は、米軍機の墜落や不時着、部品落下が県内どこでも起こり得ることを明らかにした。
辺野古移設も単なる基地たらい回しであって、県民の負担軽減にはならない。
もちろん、八重山の空も危険と無縁ではない。昨年9月末、新石垣空港に緊急着陸し、整備まで6日間居座った海兵隊オスプレイ。県内どこでも、いつでも起こりうる事態だ。
空から恐怖と不安が落ちてくる。日本の安全保障が沖縄県民の生命、財産を犠牲に成立していいはずがない。しかし現実は、そんな理不尽に支えられている。