第2次世界大戦後の日本建築界をリードした建築家の前川國男氏(1905~1986年)が生前最後に手がけた石垣市民会館を有する石垣市は、前川建築物を文化交流拠点として利活用している「近代建築ツーリズムネットワーク」(8自治体)に9月29日付で加盟した。今後、ネットワークと連携し、ツアーの造成など市民会館を観光資源として活用していく考えだ。
前川氏は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887~1965年)の弟子。ネットワークは、ル・コルビュジエ建築群の世界遺産登録を契機に、前川氏が建築した公共施設の公開・開放を効果的・効率的に推進していくため、各地域が持つノウハウ・人材や共通ツール、イベントを活用して近代建築の観光資源化を促進することなどを目的に2016年11月18日に設立された。
石垣市民会館は1986年の開館。日本最南端に位置する県内唯一の前川建築物で、沖縄の気候風土に合わせたパーゴラの大きなひさしと穴あきブロックなどが用いられ、屋根にはシーサーが据えられている。市は、文化交流都市として市民会館の歴史的・文化的な価値を見直す良い機会になるとして、ことし6月にネットワークに加入を申し入れていた。
加盟自治体では、景観重要建造物への指定や修復補助、パンフレット作成、バスツアーの実施、イベントなどを実施しており、これらのノウハウをネットワークで共有するとともに人材交流も図っている。17年度は、誘客につながる事業の研究、シンポジウムなどネットワーク活動の理解促進、ボランティアガイドの育成、商品造成に調整などを行っている。
市は手始めに今月29日から始まる文化庁メディア芸術祭石垣島展で、市民会館で有効活用されていない空間(デッドスペース)を会場の一つとして利用する。市民会館は「文化拠点として観光のルートにしたり、各自治体のツールを取り入れて活用したりしたい。デッドスペースを含めて催事に使いたい」と話している。