■議会が自ら地方自治否定
石垣市議会は陸上自衛隊ミサイル基地配備に関して、野党会派が提案した住民投票条例案を賛成少数で否決した。
民意のありかを示す機会を議会が否定したことになる。
地方自治と民主主義にその権能を保障された議会が、国策を理由に自らよって立つ地方自治と民主主義を否定したに等しい行為である。
反対討論の我喜屋氏は中国脅威論を展開したうえで「国防に関して一地域が住民投票で決めるのはどうか」と主張。
賛成討論の長浜氏は、「国と地方自治体は対等」としたうえで「地方自治のあり方、民意はどうなのか明確にするため、市民に問うべきだ」と述べたが投票結果は賛成7、反対13人の否決。
この議決結果について中山市長は「安全保障はわが国全体に影響を及ぼすので一自治体の住民投票で決めるのはそぐわない。議会の判断は適切」と述べている。
はたしてそうだろうか。
改めて地方自治の定義を確認する。「地方公共団体の政治が国の関与によらず、住民の意思に基づいて行われること」(大辞泉)とある。そのとおりだ。
■主権者に判断させよ
地方自治法は日本国憲法第8章によって規定され、憲法と同時に施行された。住民の政治参加の権利を保障し、地方自治の自主性、自律性を強化することを図っている。
自衛隊配備が石垣市の現在および将来において、すぐれて地方自治の問題であることをこれまでたびたび指摘してきた。従って、今回の「議会の判断」は不適切であったと言わざるを得ない。
近隣集落との距離、騒音や生活、自然環境保全、島のありよう、いずれも市民の暮らしに直結する課題である。これが住民自治、地方自治の課題でないとの発想はいかがなものか。
地方自治の問題は、主権者たる市民こそが判断すべきである。「住民投票になじまない」という思考は自治を否定する。
自らの問題は自ら決める。国策を理由に民意を示すことが適切でないと言うことは、新辺野古基地建設や高江ヘリパッド建設を甘んじて受け入れよと主張することに等しい。
結果として今後、議員発議による同様の提案は極めて困難な情勢になるとみられる。
■真価問われるこれから
陸自配備に反対する住民運動の側には、条例案否決に萎縮しているいとまはない。その可能性も視野に入れた提案だったろうし、「次の一手」を議論しているに違いない。
今回の否決で改めてわかったことは、市長や与党議員らは石垣市民の民意がはっきりと示されることを恐れていることだ。
住民投票なら陸自配備のみが争点である。それを避け、複数の政策テーマや地縁血縁、さまざまな要素が複雑に絡み合う市長選に持ち込んで問題を決着させることを狙っている。
それに対抗するには、市長選挙以前に何としても民意を明らかにすることだ。
手法はいくつかあるだろう。地方自治法に基づく直接請求はどうか。首長の解職、議会の解散、条例制定それぞれの請求を法は認めている。
その他にも民意を明らかにする手はあるはずだ。数字による民意である。
過去に防衛省等に提出した反対署名は、1万3千筆を優に超えていたのではなかったか。
市民連絡会には、改めて今後の運動の方向性や機動性、運動の広がりや組織強化を熱く議論してほしい。そのムーブメントの中から次なるリーダー像が見えてくるに違いない。
真価が問われるのは、これからである。