■返済不要の奨学金制度
「子どもの貧困」の深刻化を受けて返済不要の「給付型奨学金」がクローズアップされている。国は来年度から卒業後の所得に応じて返済額を増減する「所得連動返還型奨学金」を導入するが、これとは別に「給付型」の導入も検討しており、全国の各自治体や大学も独自に導入を始めた。
その中で「子どもの貧困」が最も深刻な沖縄は、県と竹富町が2017年度からいち早く導入を決めた。石垣市、与那国町にも早急な制度創設を望みたい。
今や大学に通う2人に1人が奨学金制度を利用しているといわれる。しかし現在の奨学金制度はほとんどが返済が必要な有利子の「貸与型」のため、非正規労働が約4割という厳しい雇用環境の中で卒業後に収入の少ない非正規雇用などに甘んじ、返済に四苦八苦している若者が多いという。
そこで導入されることになったのが卒業後の所得に応じて返済額を増減する「所得連動返還型奨学制度」だ。対象は国費で賄われている日本学生支援機構の無利子奨学金。しかし負担はいくらか軽減されても「借金」に変わりはなく、返済の厳しさは続く。
■人材確保の竹富町の制度
いわば現在の奨学金制度は、貧しい家庭の子どもたちに、憲法で保障された学ぶ機会を与えるのと引き換えに、多額の借金を強いる「学生ローン」のような制度でもある。これで果たして「貧困の連鎖」は断ち切れるのか疑問だが、そこで出てきたのが返済の必要のない「給付型奨学金制度」だ。
参院選で与野党が訴え、政府も「一億総活躍社会プラン」に検討を盛り込んだ。単なる選挙向けだったと言われないよう早期実施を求めたい。
沖縄は非正規雇用が2人に1人で全国の中でも「子ども貧困」が深刻なだけに、県外大学進学者を対象に翁長県政がいち早く導入を決めた。1学年およそ25人を想定し、在学中の4年間1人月額7万円程度を支給するという。
しかし対象が本土の難関大学に限定されているため、「門戸が狭すぎる」「多くの高校生が申請すらできない」などと疑問の声も上がっており、そこは県内含め各面から見直しが必要だ。
竹富町は現在町内で幼稚園教諭、保育士、保健師などの確保が困難なことから、新たにこれらの人材育成を目的に返済不要の「人材育成奨学基金制度」を創設する。来年度から実施するが、まず実効性がポイントだ。
■石垣市も保育士らが不足
石垣市や与那国町は独自の奨学金制度があるが、いずれも卒業後に返済が必要な「貸与型」であり、早急に給付型への転換が求められる。中でも年15人と若干名を対象に月額5万円を貸与する二つの奨学金がある石垣市も、幼稚園教諭や保育士などを郡外から渡航費用を出して募集するほど不足しており、どういう制度にするのかスピード感を持った対応が求められる。併せて現在、奨学金を返済中の返済困難者に対しても行政の支援があるべきだ。
奨学金は未来への投資だ。高校生の授業料は無償化されたが、大学は依然奨学金頼みだ。日本や八重山の未来のために奨学金という借金で子どもたちの学びの門戸を狭めてはならない。