■2万年前の古代人の顔復元
新石垣空港敷地内の竿(さお)根田原洞穴遺跡の発掘調査が終わることから、県立埋蔵文化財センターによる現地説明会が去る2日行われた。
2010年、同空港建設予定地の洞穴から発見された人骨は、2万年前の旧石器時代のものと判明し人々を驚かせた。説明によると、同遺跡からは2万年前の人骨を含め約1000点の人骨片が発見された。完全な状態のもあり、保存状態がよい頭骨はデジタル技術を使い、顔つきなども復元したいという。2万年前の渡来人の復元に心が躍る。
同遺跡は国内最大規模、アジア有数の遺跡になるという。今後は同センター、石垣市教育委員会、文化庁が遺跡の保存方法を検討していくというが、それについては市民の意見も反映させてほしい。人骨の行方も気になるところだ。地元石垣市の所有にしてほしいというのが識者や市民の願いである。
■ロマンあふれる先史の航海再現
国立科学博物館が実施する3万年前の旧石器時代に台湾から沖縄の島々に渡った人たちがどのような方法で航海を行ったかという「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」は先史時代のロマンがあふれる。与那国島に自生するガマを乾燥させ、蔓(つる)で縛った草舟二そうで与那国比川から西表までの約75㌔をこいで航海するものだ。
これは、来年7月に予定している与那国~台湾間の航海に向けてのものだという。
3万年前というと、更新世後期(約2万年前)のころだ。氷河期の最終期で海水面が約120㍍低下し、島域が広がり、石垣島と西表島が一つの島を形成した時代でもある。県内数カ所から発見されている旧石器人が渡来した時期だ。渡来の経路は不明で今回の実験はその謎に挑戦する試みでもある。与那国、西表島間(与那国~台湾)の航海が成功したとしても、現代と氷河期とでは時代が異なり、多くの疑問は残る。しかし果敢な実験は評価される。
■自然環境も議論すべきは?
あすはシンポジウム「沖縄に国立自然博物館を」実行委員会主催の「沖縄に国立自然史博物館を~島嶼ネットワークの可能性を探る~」が開催される。夜は「八重山は島全体がミュージアム」というトークショーも行われる。これは、日本学術会議が東北と沖縄の2カ所に設立した方が望ましいと提言している国立自然史博物館の八重山誘致に向けたシンポジウムである。
同館は規模の大きな一館を建設するのか、島々にある自然関係施設とネットワークをつくり、センターのような施設を置くか模索の段階で、そのためのシンポジウムでもあるという。
誘致に向け幅広い運動を展開してほしい。しかし「琉球列島には世界に誇れる自然が残されている。自然とともに生きる人々の営みも脈々と受け継がれています。この地の生物多様性と自然の懐の深さを世界にアピールする拠点として国立自然史博物館が必要である」という趣意のような現状ではあるまい。むしろ自然破壊や乱獲は進行し、レッドデータブック記載の生物が増加しているのが現状ではないか。「自然の懐の深さ」などは現状認識の甘さとしか思えない。「自然豊かな八重山」も同じだ。
シンポでは自衛隊基地問題、ゴルフ場建設計画や土地開発等、八重山(沖縄)の自然環境の抱える問題も論議してほしい。でなければ標本と研究者だけの〈自然史〉博物館となろう。
それにしても、新石垣市立八重山博物館建設は施政方針にもなく、予算も付かず、またも打ち上げ花火で終わるのだろうか。