■平和に逆行する安倍政治
6月は沖縄にとって特別な月だ。それは先の大戦で20万人余もの命が本土防衛の“捨て石”となった「沖縄戦」終結の「慰霊の日」があるからだ。毎年6月23日のこの日は首相も参列して鎮魂の慰霊祭が行われ、平和と不戦の誓いをするが、安倍政権の登場でこの国は再び誤った道を突き進んでいる。
特に戦後70年の昨年、安倍政権は安保関連法を数の力で強行採決して日本は米軍と一緒に世界のどことでも「戦争する国」に大きくかじを切り、平和国家日本の未来は危うくなった。このまま安保法の施行を許すべきでない。
沖縄では「基地負担軽減」の言葉とは裏腹に、広大な基地の県内たらい回しで100年も200年も居座る米軍基地の建設が新たに辺野古で強行され、さらに基地のなかった宮古、八重山でも自衛隊配備が進み、沖縄はまた本土防衛の“捨て石”となる「軍事要塞(ようさい)化」が安倍政権の手で強行中だ。
一方で基地あるが故の米軍犯罪がまたも起き、19日には怒りの県民大会も開かれる。悲惨な戦場となった沖縄から子や孫の未来を危うくする、再び戦争につながる一切の軍事施設や米海兵隊らはすべて撤去されるべきだ。
■お粗末な市議会決議
この県民大会に対して石垣市議会が事実誤認の実にお粗末な決議をした。大会を主催したオール沖縄会議と立ち位置が違う自民党などの与党が数の力で決議したものだが、いくらもっともらしい理由を並べても、それは高校野球を政治利用した県民大会への言いがかり、いちゃもんにしか見えない。
議会も過ちがある決議なら直ちに撤回すべきが、それもできずに宙に浮いているというから、議会の仕組みも不思議だ。与党は文言を修正するというがどう調整するか注目であり、その修正した決議はそれで有効なのか。
その与党は、現在開会中の今議会で自衛隊配備推進派が提出した請願採択を強行の構えだ。なぜ急ぐのか。
安倍政権は、どんなに反対があっても決めてしまえばあとは何とかなると数の力で強行する。多数与党の宮古島市も配備ありきの強引な進め方が審議会報告に対する市長の改ざん要求になり、市民の強い反発を招いている。
石垣市の市長も与党もそこに学ぼうとしているのか。反対を問答無用で切り捨てる強引な進め方は必ずどこかで反動が出るはずだ。今の極めて急進的な与党議員にはリベラルな保守層からの批判も少なくない。石垣市の未来を決める案件の判断には慎重さが必要だ。
■改憲と安保法が争点
既に激化している参院選は、安倍首相が「在任中に成し遂げたい」としていた悲願の憲法改正と、野党が廃止を求める安保関連法の存廃、それに貧困社会の格差是正が主な争点だ。
しかし首相は選挙戦で憲法改正を封印し、1億総活躍社会やアベノミクスなどの経済政策を前面に出す戦術に転じた。ところが特定秘密保護法も安保関連法も、経済政策を前面に出した選挙に勝利すると突然国会に提出、成立を強行した。今度も警戒が必要だ。
「慰霊の日」と重なる沖縄の参院選は、県民に差別を押し付ける安倍政治の功罪が検証されるべきだ。