■市の将来を左右する問題
石垣島への自衛隊配備計画の2度目の住民説明会が5月24日、防衛省主催で突如開催された。石垣市や市民からの要望による開催という。石垣市や防衛局はホームページで市民に呼びかけただけ。肝心の市長は出張で不在だった。
自衛隊配備計画は、石垣市だけではなく八重山の将来を左右する大問題だが、中山市長は同問題について立場を明確にせず、安全保障は国の専権事項と、まるでひとごとのように振る舞っているが、市民の生命財産を守るのが市長の務めというのであれば、同計画を疑問視する市民がいる以上、情報を収集・提供し、懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。防衛省に丸投げするかのような姿勢をとっている中山市長は傍観者のように見える。
本来、このような問題は市が主催するのが筋だ。『石垣市自治基本条例』の前文は「市政の主権者である市民、市民自治によるまちづくり」「自らの地域は自らの手で築いていこうとする自治を推進」とうたっている。
市長が立場を明確にしていないのは、うがった見方をするならば市議会での誘致請願採択を「民意」としてケリをつけたいと思っているからではないか。
市は市民団体の公開質問にも回答していない。『石垣市自治基本条例』第23条の「市民からの意見・要望・苦情に迅速に対応する」からすれば、職務怠慢である。黙殺は許されない。
■アリバイ作りの説明会
防衛省が、4月22日の前回説明会での質問への回答さえ整理できていない状態なのに急きょ、2度目の説明会を開催したのには何らかの意図を感じたが、それを裏づけるかのように5月31日の一部中央紙は防衛省が2年前倒しで配備着手を行うため2017年度予算案概算要求に用地取得費など100億円前後を計上すると報じている。つまり、住民説明会は6月市議会での誘致請願採択を見込んでのアリバイ作りではなかったか。
■市民主催の説明会への参加を
市議会与党議員のなかには説明会終了後、採決への条件が整ったと述べる議員もいた。防衛省の説明資料によれば、市議会議員や防衛協力会への説明を行ったと記している。非公開による誘致派だけへの説明会だ。議員は防衛省の説明を全て納得したのか。疑問を感じた議員もいるはずだ。なぜなら、市民が141項目、いやそれ以上の疑問を示しているのに防衛省がいまだ全てに回答していないからだ。
市民が納得せず、議論も深まっていない状況で、6月市議会で誘致請願採決はできないだろう。
説明会で防衛省は『力による現状変更への抑止力』というが、中国脅威論を背景としている。しかし、現在の米中関係からはそのような可能性は考えにくく、石垣島への部隊配備が抑止力になるとの説明は、はなはだ疑問だ。
防衛省や沖縄防衛局は非公開で賛成派団体の要請で説明を行ってきた。ならば、反対派や懸念を持つ市民の要請にも応えるべきだ。でなければ不公平である。計画に対して理解を得たいというのであれば、彼らの疑念を取り除くことから始めなければならない。