■石垣海保、全国屈指の陣容へ
海上保安庁はこのほど第11管区石垣海上保安部に尖閣警備専従部隊の配備を整えた。
専従部隊の陣容は、最新型1000㌧級のくにがみ型巡視船新造10隻と、ヘリ搭載つがる型2隻の配置転換による12隻体制。乗員は約600人で、今月から本格的に稼働する。
特徴は、新造巡視船を同一規格・設計・仕様とすることで、運用能力を高めたこと。通常、巡視船は「1隻1クルー」が固定され、乗員の休養のため帰港すると船体も休む。専従部隊では新造巡視船のうち6隻について「複数クルー制」を導入し8隻分の乗員をあて、帰港すると直ちにクルーが交代して船体は出港する。巡視船の稼働率を高くすることにより、専従部隊は12隻の陣容で14隻相当の対応能力を持つことになるという。
これにより石垣海保は、全国で最大陣容の人員と、保有巡視船艇数を誇ることになる。
■地域への影響じわり
もちろん乗員600人は一気に増員したわけではない。海保が石垣市内のアパートを借り上げるようになったのは平成26年夏以降だった。
市内のアパート需要は、平成16年から18年頃の「ミニバブル期」、移住ブームに合わせるように新築ラッシュが続いた。特に、真栄里地区への集中は目を見張るものがあった。それらはすべて埋まり、なお大幅に不足している。
もちろん、海保は自らその需要を満たすべく職員住宅整備も進めている。新川小学校の南で整備中の職員宿舎は5階建て3棟60戸ほどか。工事関係者が出入りするなか、同時進行で入居が始まる慌ただしさだ。旧空港南側にも今後、単身者用200戸分の職員住宅建築を予定しているという。
影響はアパートや職員住宅新築のみにとどまらない。平真小学校は昨年、2学級増加した。登野城小学校はこの4月、1学級増えてプレハブ教室が不足すると聞いた。登野城1町内は昨年来、アパート建築ラッシュである。
これらは、「尖閣増強」のみが原因ではない。が、少なからず何らかの影響を及ぼしているとみるべきだろう。
全国で地方の人口減少が続くなか、石垣市の人口は増え続け、もうすぐ5万人を超える。だが、地域がこれまで営々と築いてきた地域なりのコミュニティーや伝統文化、歴史あるいは自然との向き合い方、人々の暮らしはどう変化していくのだろうか。まちづくりはどう変わるか。地域からの検証を丁寧に進めることが必要だろう。
■「つくられた危機」
それにしても、である。尖閣国有化前後の日中摩擦は人為的に「つくられた危機」という以外にない。24年、当時の石原慎太郎東京都知事が米国で都による「尖閣購入」を打ち上げたことが、危機を一層あおり出した。これに尖閣基金創設で呼応したのは中山義隆石垣市長だった。
「つくられた危機」は安倍政権に利用され、「島しょ防衛」を名目とした陸上自衛隊の南西諸島配備に連なっている。与那国島に続く石垣島への部隊配備計画。規模は約600人で詳細は不明なままだ。
石垣市民はこの「つくられた危機」に自ら進んで加担した中山市長に対し、もっと怒ってよい。陸自配備への賛否で市民と地域を分断し、危機の渦中にさらしているのだから。その検証もまた必要である。