■労働条件も書面で明示を
全国で不本意非正規労働者の増加が政治的・社会的問題になっているが、ハローワークの八重山職安(親泊政義所長)では、こうした対策強化のため今月いっぱいを期間として現在、初の「不本意非正規対策・学卒正社員就職実現キャンペーン」を展開中だ。企業経営者の理解を得て、ぜひ一人でも多く正社員化を実現してもらいたい。
同様に八重山労基署(比嘉健三署長)も、今月を「労働条件明示・書面交付強化月間」として雇用主が労働者と雇用契約を結ぶ場合、労基法が義務付けた賃金や労働時間などを書面で明示し交付を促す運動を展開している。
管内の違反は全国の2倍余の約3割に上っており、口頭での説明がトラブルになっている。これも「雇用の質」改善の一つであり、企業側は労働条件の明示や書面交付を徹底すべきだ。
■無年金・低年金者が多発?
小泉政権以降急増した非正規労働者は今や働く人の約4割を占め、沖縄は2人に1人とさらに深刻だ。しかもそれは民間企業だけでなく、教員や国・県・市町村職員などの公務員にも及んでおり、問題は根深い。
その賃金格差は「子どもの貧困」などの生活困窮世帯の増加や、結婚できない若者などの増加につながっており、それは将来の無年金や低年金など「下流老人」の増加が懸念される状況だ。
そのため安倍首相も夏の参院選をにらんだ選挙対策もあり、「同一労働同一賃金」を打ち出さざるを得なくなった。これを受けて厚労省も初めて数値目標も掲げた新年度から5カ年の対策を取りまとめ、非正規の正社員化と待遇改善、大学・高校新規学卒の正社員採用に乗り出すことになった。
非正規労働者は約2千万人のうち本人は正社員を望んでいるのに、「不本意」非正規は全体で約2割。25~34歳の若年層は約3割、派遣社員は4割超もいるという。それを厚労省は5カ年で半減させる数値目標を掲げた。
八重山職安の今回のキャンペーンは、同計画を受けてのものだろうが、企業側に正社員化のメリットや新たな交付金や補助金などの制度を周知し、着実に成果が出るようにしてもらいたい。
■メリット多い正社員化
現在県全体がそうだが、八重山も好調な観光を背景に雇用は好調に推移。人手不足が売り上げ減や残業増を招くほど深刻な事態になっている。
そのため県内の賃金は各業種で正社員、非正規社員ともほぼ軒並みアップし、正社員への転換も増えたという。それでも求職者の約7割が正社員を希望しているのに、正社員求人はわずか27%しかなく、依然多くの人が不本意な非正規労働を強いられている。
企業側にすれば正社員化は人件費増で経営面に懸念があるだろうが、一方で▽企業イメージのアップによる有能な人材確保のしやすさと定着率の良さによる雇用の安定▽社員の働く意欲向上▽中長期的視点での人材育成と技術の伝承▽定着率の良さによる採用コストの削減▽顧客との信頼関係の維持|など懸念をしのぐメリットも多い。
本土では従業員を大切にする企業経営で毎年ハワイに慰安旅行に行くほど成功している中小企業もある。