■滞在日数と消費単価が低迷
本年125万人を目指す八重山観光の1月度入域客実績は前年比19・1%増で順調にスタートした。
新石垣空港開港2年目は112万人と飛躍的に増加し、新空港の威力を見せつけたが、昨年は度重なる台風の襲来を受け、111万人に低迷した。
海外のクルーズ船は引き続き好調で29千人が増加、空路は台風の影響で35千人が減少、トータルで6000人減少、観光消費額は643億円になり、前年比10億円減少した。
課題は平成10年当時の一人当たりの消費額は約10万円であったが、近年は5万7000円程度に低下していることや滞在日数が3泊以上に伸びていないことだ。「石垣市観光基本計画」改定では入域目標だけでなく観光消費額と滞在日数を増加させる具体的なメニュー、スケジュールと着実な予算の見通しを盛り込むことを期待したい。
■質も量も大事
人口減少による経済の縮小が全国的に懸念される中、地域の持続的な発展を図るため、観光産業が地域をけん引し、観光客150万人、観光消費額1500億円、滞在日数5日の高い目標を目指す気概を持ってほしいものだ。
実現のためには、マンパワーが必要であり、観光従事者が現状の8000人からさらに4000人程度の雇用、人材確保、人口増加が必要で、今後の大きなテーマになってくる。
最西端の与那国町は人口が減少し、友好都市の最北端・稚内市は漁業等の不振で人口は5万5000人から3万6000人まで減少、地方の過疎化が進んでいる。
「量より質」が大事という議論を耳にするが観光産業が発展する過程でボリュームが増加し、多様性を広げ、品質や単価の向上が順次図られるのであり、さまざまなニーズに対応できてこそハワイのように一流の観光地になるのである。観光の究極の目標は「住んでよし、訪れてよしの街づくり」にある。
観光客の質の問題を論ずる前に観光従事者のスキルアップ、賃金や労働環境の改善を進めることがまず肝要だ。
■八重山らしさが大切
通貨や原油価格の変調、中国経済の不振など不安要素もあるが、八重山観光の魅力と可能性は、石垣市が元気な市町村ランキングで全国3位になるなどさまざまな調査で高く評価されている。
その意味で量も質も大事であり、常に「高みを目指す」努力が必要になる。
ハード面の整備として大型クルーズ船に対応できる14万トン級の旅客船バースや、新石垣空港の国際線旅客ターミナル、懸案のゴルフ場、MICE、健康スポーツ施設の建設などインフラ整備を早急に進めることが重要だ。
ソフト面では5日間滞在しても飽きないほどの着地型メニューの充実を図る必要がある。自然環境にこだわり、八重山らしいおもてなしをメーンに据え、カジノや爆買ツアー等は目指す方向ではないだろう。西表石垣国立公園の世界自然遺産登録に官民が強固に取り組み、食や自然、文化の体験型メニュー、星空とサガリバナの開発は新たな目玉になるだろう。「ミシュランガイド」や「ロンリープラネット」などからさらに評価され、世界的な観光地に成長することは十分可能である。