■モデル事業実施へ
全国では子どもの6人に1人、沖縄はもっと深刻で3人に1人が貧困状態という「子どもの貧困」対策に石垣市も動きだす。2016年度からモデル事業の実施を12日明らかにしたのだ。支援の充実強化を望みたい。
同年度からは内閣府も10億円を予算化。県も30億円の基金を積み立てて6カ年の推進計画をスタートさせるなど対策に乗り出すことになっていたが、そこに石垣市も加わることになった。
県内では既に那覇市などが内閣府の予算で取り組みを明らかにしており、竹富町や与那国町も事業を実施し、新年度が沖縄・八重山の「子どもの貧困」解決元年になることを期待したい。
■ひとり親世帯の貧困率59%
県民所得全国最下位、非正規労働者割合全国一位の沖縄県は、全国に先駆けて子どもの貧困実態調査を行い、先月29日中間報告をした。そこで分かったのは子どもの貧困率が29.9%で全国平均の約2倍に上る3人に1人、ひとり親世帯の貧困率は58.9%で、もっと深刻だということだ。
子どもの貧困は見た目には分かりづらいが、親が病気やけがで仕事ができないとか、非正規労働で賃金が安いのに加え子だくさんのため電気水道も止められる貧困状態に陥り、給食費が払えない、食事は学校給食だけなどの子どもが確実に増えているという。
さらに貧困が原因の児童虐待が増え児童養護施設に保護されたり、あるいは親が夜働かなければならないため、子どもは居場所がなく深夜はいかいなど非行に走ったり、罪を犯して少年院に送られたりのケースは全国の残虐な少年事件で明らかだ。
こうした貧困の子どもは十分な教育を受けられず、「貧困の連鎖」になっていることも既に明らかだ。
■子どもの貧困は社会の問題
このことから県の6カ年の「子どもの貧困対策推進計画」は、「子どもの貧困は自己責任論でなく、社会全体の問題」と明示。その上で子どもの貧困は親の収入が増えないことには解決が困難なことから「保護者への就労支援」「生活支援」「経済支援」と「子どもの教育支援」を重要施策に位置付け、34の指標で数値目標を掲げている。
たとえば市町村の無料塾を現在の32市町村から41の全市町村に、大学等進学率を39.8%から45%に、生活保護世帯の高校進学率を83.5%から90.8%の全国並みにといった具合だ。
国の緊急対策事業予算10億円では、県内で貧困の現状を把握する支援員130人配置と、食事提供や学習支援を行う子どもの居場所を30カ所程度想定しており、これを受けて石垣市のモデル事業は支援員3人配置と子どもの居場所は1カ所を設置予定という。
市児童家庭課では市内のひとり親は11年度の829世帯が14年度は934世帯に増え、状況は県平均を上回る厳しさだとして、独自に地域の子育て支援事業者も募っていたが、2業者が名乗りを上げてきたのはありがたい。
本島地区ではNPOが子ども食堂を開設したり、フードバンクで生活困窮世帯に食の支援をしており、八重山でも今回の事業開始を機に官民で支援の輪が広がることを期待したい。