昨年3月に肺がんと宣告された与那国島出身の福里安展(やすのぶ)さん(66)=豊見城市=が、民謡の名手と呼ばれた亡父、武市さんの遺志を継ぎ、島の子守唄や童謡を収録したCDと工工四を6年かけて完成させた。安展さんは島の方言や古謡が消えつつあることを危惧しており、「子どもたちには島の古い言葉や、その思いを大事にして歌いつなげてほしい」と思いを込める。
武市さんは1970年に宮良保全、冨里康子さんとともに「与那国民謡工工四」の発刊に携わるとともに、16年の歳月をかけて子守唄と童謡の工工四を制作。レコーディングを夢見ていたが、かなわないまま、78年に他界した。
安展さんは、埋もれた古謡や子守唄などを掘り起こし、演奏活動にも取り組んでいる。6年ほど前からは武市さんが残した工工四の出版とCD化を模索してきたが、昨年3月に肺がんの宣告を受けた。東京での治療を余儀なくされるなか、同9月に横浜で録音を敢行した。
CDと工工四はいずれも「与那国島の子守唄と童謡」として発売。CDには、雨は降らないでほしいと願う「ながやま」をはじめ、「にちぬさんあぃてぃ」「はらるるでー」などの子守唄4曲と、「いがびあぶ」「花の伊舎堂」「うちぬはん」などの童謡7曲の全11曲を収録。島の風土と生活に根ざした唄は、温かさと生命力にあふれ、福里さんの思いが伝わってくる。
工工四では歌詞やその歌が生まれた背景を説明。「うちぬはん」を歌いながら行う遊びについても解説している。
福里さんは「父がやり残したことができて安堵(あんど)している。島の先輩からは『昔の歌がよみがえった』とうれしい知らせもあった。今後も広く伝えていきたい」と話している。
CDは2500円(税込み)、工工四は1400円(同)。問い合わせは090—5212—5478(奥津澄江さん)。CDはタウンパルやまだでも取り扱っている。