■八重山は桜の産地
カンヒザクラが満開し、ツバキも濃い緑の葉陰から赤い花をのぞかせ、コチョウラン、カトレアなどのランも咲き始め、まさに春らんまんである。カンヒザクラを眺めカメラに収めたりしていた観光客に、「この花は何という名前ですか」と尋ねられた。サクラと言えばソメイヨシノとかヤマザクラの白や淡い紅色に近いサクラにしか親しんでいない県外からの観光客にとって濃いピンク色のカンヒザクラは異様に見えるらしい。
カンヒザクラは、その色からヒカンザクラ(緋寒桜)とも呼ばれる。石垣市米原荒川のカンヒザクラは県内で唯一の自生地で、国の天然記念物に指定されている。だが近年は松や他の植層に押され減少する傾向にあり、早急な対策が望まれる。
王府時代の古文書によると、桜は琉球に2種類あり、カンヒザクラとクメノサクラのようである。古文書には桜は八重山から本島に持って来るともあるので八重山は桜の産地であったのであろう。
■ランの産地でも有名
サクラと同じくランも八重山は産地として知られていた。白くて芳香を放つフウランも有名だったようだが、何といっても八重山を代表したのは大形の着生ランであるイリオモテランであろう。寿蘭とか入面蘭(ニューメンラン)と記されている。
イリオモテランは、その名の通り西表島に多くみられたのでその名が付いた。ニューメンランは西表を入面と書き、それをニューメンランと呼んだことに由来する。
ランの産地と呼ばれていた八重山だが、米軍統治時代にランマニアが地元の人たちを使い乱獲したため、石垣島、西表島に自生するランはほとんど消滅したといわれる。イリオモテランも乱獲され、自生しているものはもうない幻のランとされている。
十年ほど前、西表古見にある独立行政法人林木育種センター西表熱帯林育種技術園がイリオモテランの種子を入手しバイオによって育苗、学校や関係者に配布した。イリオモテランの復活かと大いに期待されたが、バイオ技術者の転勤によって、一回きりとなった。
林木育種センターは本来、樹木の育種研究が主な目的の施設であり、ランの研究計画は今のところないという。イリオモテランを育苗した施設は使用されずにそのままある。宝の持ち腐れであり、何とか活用したい。
■コウトウヒスイランを培養増殖
八重山広域市町村圏事務組合などが国と交渉し、施設を借り受け活用し、イリオモテランやフウランの復活やバイオマス技術者の育成にも取り組んでほしい。八重山農林高校ではバイオマスで、コウトウヒスイランを昨年10月に50本ほど培養しているという。今後はぜひイリオモテランなどにも挑戦し市民に普及してもらいたいものだ。
名護市では、ナゴランの栽培が盛んだという。市民も名護のランとして誇っている。高値の花であったが、現在では手ごろな値段で入手しやすくなった。八重山でもイリオモテランやコウトウヒスイランがナゴランのように入手できれば家庭に一鉢、また街路樹に着生させ、八重山をランの一大産地にする構想があってほしいものだ。観光の島は花に包まれた平和な楽園でありたい。