【与那国】22日に投開票される与那国島への「自衛隊基地建設」の民意を問う住民投票まで残り5日となり、賛成派、反対派の両グループが戸別訪問や説明会を開くなど運動は過熱している。八重山毎日新聞社は16日、自衛隊に賛成する会の金城信浩会長(71)と、住民投票を成功させるための実行委員会の上地国生委員長(72)に①有権者に訴えたいこと②レーダー基地の電磁波③中学生の投票権④相手側の票が多かった場合の対応—を聞いた。
【自衛隊に賛成する会・金城信浩会長】
■国境の島を守る自衛隊 健康被害、基準守れば問題ない
①反対派はレーダー基地の問題、米軍も与那国島にやってくることなどを挙げているが、住民投票のテーマは「自衛隊基地建設」について民意を問うのものであって、他の要素を加えるのは問題のすり替えだ。そこを踏まえたうえで投票してほしい。
自衛隊が配備されることで、国境離島の与那国島を守れる。自然災害や急患の際も迅速に対応することが可能。町民にとっても、配備に伴うインフラの整備をはじめ、必要とされる各種店舗ができ、雇用創出・人口増などが期待できる。
今年3月には500人ほどの工事関係者が来島する予定となっており、町内での消費も増える。また、160人の隊員と家族合わせて約200人が移り住むことで、人口や小中学校の児童生徒数も増加する。
税収についても約3000万円が試算されており、地域経済の活性化につながる。
②国が基準を上回っていないということを説明している。全国各地のレーダー基地でも問題になっていないので、基準を違反するとは思えない。反対派は逆に問題を大きくすることで、住民の不安をあおっているように感じる。
③議会で決まったことなのでしかたないが、同意はできない。学校でのいじめや仲たがいの原因になる可能性もあり、中学生以上が参加する実例が全国に飛び火することも懸念される。
中学生に対して積極的に投票を呼びかけることはしないが、その保護者にしっかり説明し、家庭内で自衛隊配備について一緒に考えてもらうようにしていきたい。
④住民投票に法的拘束力はなく、中谷元防衛大臣も「予算も計上しているので、予定どおり遂行する」と発言している。町側が協力的な対応ができなくても、結果にかかわらず配備に向けた動きは進むと思う。
【住民投票を成功させるための実行委員会・上地国生委員長】
■電磁波で健康被害懸念 経済発展どころか衰退に
①自衛隊が入ると紛争が起きた際に与那国が標的にされる。2005年の市町村合併の住民投票で自立の道を選んだのだから、自衛隊に頼らず、台湾など周辺諸国との交流を通して東アジアの玄関口として発展していくべきだ。レーダー基地が設置されることで健康被害が懸念され、明確な説明や補償もないまま造らせるわけにはいかない。
前回の町長選は47票差で敗れたが、150人の自衛隊員が入ってくると選挙を左右する力になる。自衛隊に都合のいい町長や議員が誕生する可能性があり、合法的に自衛隊の島になりかねない。
②さまざまな研究で電磁波が体に与える影響が報告されている。建設予定地は、一番近い住宅から180㍍程度しか離れておらず、特に影響が出やすいと言われる子どもたちの健康被害が心配。携帯電話基地局の電磁波でも鼻血や視力障害などの被害が報告されており、自衛隊のレーダーが携帯電話基地局より低いレベルの電磁波とは考えられない。
防衛局はどのようなレベルのレーダーが配備されるか開示していない。子どもを持つ親としては子どもの健康や命が一番大事。引っ越す人も出てきて久部良集落に人がいなくなる可能性もある。漁業の中心となる久部良から人がいなくなれば、地域産業の一つが失われる。町経済の発展どころか衰退になりかねない。
③子どもたちだって自分のことを考えている。自分の健康や命を守る権利は子どもたちにだってある。その意思を尊重すべきだ。
④レーダーによる健康被害などをポイントに建設の差し止め訴訟などを考えている。また、昨年の12月議会で建設予定敷地内の町道廃止案が否決されており、町道があれば立ち入り禁止区域を必要とするレーダー基地の建設はできない。町道を廃止させないよう強く呼びかけていく。