8月は観光月間だった。それにちなんださまざまな関連ニュースが流れた。八重山を訪れた観光客を対象にしたアンケートの結果も紹介された。今後のより良い八重山観光に生かしたい。ここでは新名所づくりのためのあるユニークな試みについて考えたい。
■新名所は22件
「島人ぬ宝さがしプロジェクト」という企画をご記憶だろうか。石垣島の新しい名所を探そうと2016年8月、BEGINの比嘉栄昇さんが提唱してスタート。市民限定の公募を経て同年12月、厳正な審査の結果、82件の応募の中から22件が選ばれた。「昔馬車道」(名蔵)「新ヤラブ街道」(大浜〜桃里)「親子とぅまた松」(崎枝)「浦崎の楽園海プール」(平久保)などである。
新たに誕生した名所をピーアールしようと石垣市観光文化課から「島人ぬ宝さがしMAP」3000部が発行され、比嘉さん作詞作曲の歌「昔馬車道」も出来た。公式ホームページもある。
「名前を聞かれてもわからない!のではなく、名前が無いからわからないのではないか…? 生まれたばかりの赤ちゃんにも名前がついていて、その名を呼べば呼ぶほど愛しくなりますよね。それは僕達のふるさとも同じなのだと思います」。MAPのなかで比嘉さんはこう話している。
■表示必要では
ただ、実際その新名所を訪ねてみると果たしてこのままでいいのかという疑問がないわけでもない。リーフレットで大体の場所は把握できるが、近くに詳しい場所を示す表示ひとつない。予算がかかることだし、「宝さがし」なのだから自力でという趣旨かも知れないが、探せないとストレスという副産物が生まれることにもなる。
リーフレットには写真付きの紹介文とともに星印の数で場所探しの難易度が示されている。難度が最も高いのが「ミーバイ岩」(崎枝海岸)だ。赤崎と呼ばれる岬の突端の岩に埋もれるように魚の顔が現れる。ただ、わずか人の拳ほどの大きさで目につきにくい。そのうえ角度によってはまったく認識できない。車を降り、海岸に出てしばらく歩かなくてはならない。岩肌は滑る。細心の注意が必要だ。訪ねるなら干潮時がいい。あらかじめ潮の干満を調べて行きたい。
今回のプロジェクトを象徴する「昔馬車道」は干潮時に現れる旧名蔵大橋の遺跡みたいなものだが、橋の上から確認できるのにどこから降りたらいいのか分からない。リーフレットのQRコードから手間暇かけたであろう動画付きの歌が聴けるが、現地で現物を見ながら聴けたらもっといいのではないか。
■新しい発見も
いずれにしろ、選定からもうすぐ2年になる。せっかく誕生した新名所だ。活用しない手はない。出掛けることで島人でもこれまで気付かなかった新しい発見があるだろう。それぞれに物語もありそうな場所だけに新たな観光資源であることに間違いはない。22カ所全部を制覇した人には特典がゲットできるなど関連企画があればもっと楽しいかも知れない。
今回選定された名所の数カ所は海岸線に位置している。そこを歩くとペットボトルなどプラスチック製のごみや産業廃棄物が散乱している。観光地としては恥ずかしい現実を見せつけられることにもなる。