志半ば、無念さを思うと切ない。翁長雄志知事の突然の訃報に接し、涙腺が緩むのをこらえたら、那覇支局時代のさまざまな取材が鮮やかに思い出され、温かい勇気に満たされた▼2014年12月、党派を超え沖縄の新しい歴史の扉を開いた翁長知事誕生から2年間の県政を取材。米軍の辺野古移設問題が緊迫する中、常に考えさせられたのが今、何をなすべきかという難題を県民と自らに問うなど緊張の連続だった▼翁長知事の視点の先には沖縄の未来へ平和を引き継ぐこと。それを確実なものにするために、今を生きる責任世代と言われる私たちが、子や孫たちの時代に新基地という負の遺産は残さない。その実現のためには保守も革新もないとの信念を最後まで貫いた▼集会では「グスーヨー、負キテーナイビランドー。ワッターウチナーンチュヌ、クヮンウマガ、マムティイチャビラ、チバラナヤーサイ(皆さん負けてはいけません。私たち沖縄人の子や孫を守るため頑張りましょう)」の言葉で県民を鼓舞した▼沖縄が今後、国の不条理と対峙する時、翁長知事が発した「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランド(沖縄の人をないがしろにしてはいけない)」との矜持を忘れてはなるまい▼かけがえのない政治家を失った。67歳での旅立ち、冥福を祈りたい。(鬚川修)
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