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知事死去、承認撤回貫け

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 ■正念場迎える反基地闘争

 訃報に接し、県民は大きな衝撃を受け、悲嘆にくれた。翁長雄志知事、67歳。辺野古新基地阻止を貫き、命を削るように米軍基地沖縄押し付けと闘った。哀悼の意を表する。

 オール沖縄会議はきょう、「土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会」を開く。

 国が表明している今月17日の埋立土砂投入を前に、3万人以上の参加で工事に強い怒りを示そうと企図されたが、さながら追悼集会となって知事の遺志を継ぎ、闘いを継続することを確認しあうこととなるだろう。

 また、知事が生前決断した埋立承認撤回の手続きとして県は9日、沖縄防衛局に対し聴聞を行った。制度上、職務代理者で撤回に踏み切ることは可能で、県は速やかに撤回すべきだ。撤回を支持する。

 その場合、国と県は再び法廷闘争に入る。沖縄の自治権と民主主義をめぐる闘いはいよいよ正念場である。9月中には県知事選もある。立ち止まるわけにはいかない。

 ■翁長県政の示したもの

 「イデオロギーよりアイデンティティー」を標ぼうした翁長県政の誕生は、県民の暮らしと平和な未来を守るには、保革を乗り越えた「オール沖縄」で取り組むべき必然性を示した。

 同時に政府の沖縄に対する構造的差別も白日のもとにさらした。

 国土のわずか0・6%にすぎない狭い沖縄に在日米軍専用施設のほぼ7割が集中する。政府は本土の反米感情にはただちに配慮するものの、基地の沖縄県内たらい回しを「唯一の選択肢」と明言してはばからない。

 新基地建設を強行する政府と全面的に対立した。県政運営上、沖縄振興と新基地阻止、さまざまなあつれきがあったに違いない。米軍絡みの凶悪事件や米軍機墜落など重大な事件事故も相次いだ。

 問題解決に後ろ向きな政府に対して容赦のない怒りをぶつけた。

 「上から目線の言葉はキャラウェイ高等弁務官を思い出させる」

 「日本国の独立は神話」

 「日本に自治や民主主義はあるか。沖縄にのみ負担を強いる日米安保は正常か」

 時にうちなーぐちを交え、不条理を突く鋭い言葉は県民の共感を呼んだ。

 菅官房長官は9日の会見で「信念の人」と弔意を表したうえで、辺野古新基地建設について「日米同盟の抑止力維持、普天間の危険性除去の唯一の解決策」と強調した。この落差である。

 ■「不屈の精神」継承を

 恒久平和を希求し、子や孫に誇れる沖縄をつくる。まさしく沖縄のこころを体現した、かけがえない政治家だった。翁長県知事が身命を賭して示した「不屈の精神」を継承したい。

 防衛局は埋立土砂投入を予定通り実施することで既成事実化を進める。今後の県知事選や県民投票を前に県民のあきらめムード醸成を急ぐだろう。

 県民大会に9月中にも見込まれる前倒しの県知事選。新基地建設の賛否を問う県民投票。民意を示す機会が続く。

 何度でも国内外の世論を注目させることだ。沖縄の現実を国民の、国際社会の良識に強く訴え、理解と支持を広げていくしかない。

 知事不在となっても沖縄の民意は、辺野古新基地阻止という知事公約に集約される。いわば知事の遺志とともにある。

 せめて服喪期間中だけでも辺野古の工事を中止できないのか。ジュゴンや海亀、魚やサンゴが生きる豊穣(ほうじょう)の海を埋め立ててはいけない。


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