「あわりさんてぃんしむさ」。中学時代、部活がきつくて愚痴ると、よく祖母に言われた。そうか、難儀しなくてもいいのか、肩の荷が下りるような気がして楽になった▼「若いときの苦労は買ってでもしろ」とはよく聞く言葉だが、そう簡単に言わない、あるいは言えない人もいるのではないか▼のちに、祖母の悲惨な戦争体験を叔父や叔母から聞いてそう思った。避けることのできるつらい思いなんてする必要はない。冒頭の言葉はそんなメッセージだったのかもしれない▼戦後73年。戦争体験者は年々、減少していく。祖母と同じように、誰にも語らず、語れないまま、つらい過去を墓場まで持っていった体験者も多いだろう▼過日、石垣市教育委員会文化財課主催の戦跡めぐりに初めて参加した。恥ずかしながら大浜の格納庫を見たのも初めてだった。県内で残っているのは唯一ここだけ。平和学習に利用したいとの市教育委員会の依頼に地主が応じているのだという▼こうした戦跡は市内に大小40カ所ある。ただ、史跡に指定されているのは崎枝の通称デンシンヤー・元海底電線陸揚施設だけである。きょうの1面に掲載されている山田善照さん(90)は「記憶は死んだら残らないが、記録は死んでも残る」と語った。体験と戦跡の記録の重要性を感じる。(比嘉盛友)
↧