石垣市宮良出身のシンガー・ソングライター前花雄介(38)がこのほど、ドイツの国立ハンブルク大学に招かれ、音楽を取り入れた講義を4日間行い、八重山民謡やオリジナル曲を通して学生らに沖縄・八重山の歴史・文化を紹介した。これまで沖縄・八重山の存在すら知らなかった多くの学生らから「戦争マラリアを初めて知った」などの反響があったという。
同大アジア・アフリカ研究所のガブリエレ・フォークト教授が、沖縄に興味を持つ学生を増やしたいと、5月22日から25日にかけて沖縄をテーマにしたサマーセミナーを企画。沖縄の言語学を研究する日本人教授とともに、沖縄・八重山の歴史や文化をコンセプトに音楽活動を行っている前花を招聘(しょうへい)した。
セミナーには学生20人が参加。前花は演奏しながら、「野底マーペー」「アイナマ石」「星見石」「人魚伝説」「忘勿石」など音楽の背景にある伝説、史跡、戦跡などを自身の考察を交えながら説明。琉球王府による強制移住、人頭税、戦争マラリアなどの歴史を伝えた。
学生からは「曲の内容がかなり胸に迫るものがあり、特に戦争の話に感動した。沖縄・八重山の歴史や神話などを忘れないようにするために、前花さんの音楽がとても大事だと思う」などの感想があったという。
前花は滞在期間中、在ハンブルク日本国総領事館のイベント「日本フェスティバル」や市内オープンカフェでも演奏した。
前花は「僕の理想とする音楽、教育、文化を融合させた形で音楽活動をさせてもらう機会をいただき、本当に感謝している。八重山に残る物語や民謡には先人からの思いやメッセージが込められている。そんな八重山をドイツで紹介できたことはとてもうれしいし、ドイツから学ぶものも多く勉強になった」と振り返った。