【西表】政府が1日に西表島を含む4地域の世界自然遺産推薦をいったん取り下げることを決定したのを受け、竹富町は7日夕、中野わいわいホールで住民説明会を開催した。町と環境省の担当者は国際自然保護連合(IUCN)の延期勧告を「確実な遺産登録の道を示してくれた」と受け止め、観光客数増大で懸念される生活環境への影響や対策については地域住民と意見交換を重ねる姿勢を強調。一方で、1時間超の説明会に配布資料はなく、出席者からは「どちらを向いているのか」と厳しい指摘が飛んだ。
政府は2017年2月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産への推薦書を提出。5月4日にユネスコの諮問機関、IUCNが推薦書の抜本的な見直しを求める「登録延期」を勧告していた。
説明会では、環境省那覇自然環境事務所の速水香奈国立公園企画官がIUCNの勧告概要を報告。地域住民ら33人が出席した。
速水国立公園企画官は、世界遺産登録の基準となる▽遺産価値▽完全性▽保護管理—の三点を示し、同省が評価に値するとした「生態系・生物進化」を「該当しない」と判断された点や北部訓練場返還地の編入を指摘されたことから、今回の推薦地域の遺産価値は「△」、完全性は「×」、保護管理は「〇」となった結果などを伝えた。
出席した男性住民は「観光管理は島の生活にかかる。トイレなど水問題や船、ごみはどうするのか」と登録後の課題を懸念。
町政策推進課の通事太一郎課長は、6月定例議会に改定作業を進めていた町観光振興基本計画を上程することを報告。「インフラ整備は観光管理の観点からも重要で、行政しか行えないもの。しっかり取り組んでいきたい」と応じた。
遺産登録そのものに疑問を呈した男性住民に対して、速水国立公園企画官は「目的は将来にわたり、その自然価値を守り残すこと」と理解を求め、通事課長は「西表島の自然を将来にわたり保護する仕組みを手に入れたい」と自然保全の契機につなげたい考えを改めて示した。
スクリーン画面での解説に終始した説明会を受けて、女性住民は「配布資料がなく驚いた。都度、地域と意見を重ねると言葉は聞きますが、この対応は地域住民として残念」と意見。
通事課長が「われわれの不手際。今回の資料は地域の皆さんに届けられるようにしたい」と陳謝する一幕もあった。