学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題▼大阪地検特捜部は、虚偽公文書作成容疑などで告発された当時の財務省理財局長の佐川宜寿前国税庁長官ら38人全員を不起訴処分とした▼公文書が佐川氏主導で改ざんされたのは明らか、それでも刑事罰を問わない判断。法の番人である検察が安倍政権に忖度したとは思いたくないが、どれほどの国民がこの判断を適切と思っているのか、疑問は拭えない▼森友問題では、信念に反し改ざんを行った職員が耐え切れずに自殺した。8年前、大阪地検特捜部は前代未聞、エリート検事が証拠隠滅容疑で逮捕された。今回はその汚名返上とばかり、国民の期待も大きかったはずだ▼検事の理想とする秋霜烈日の精神は発揮されたのか。特捜部の対処をみて忘れ得ぬ人が脳裏に浮かぶ。「巨悪は眠らせない」との正義感で、数々の大事件を処理した今は亡き元検事総長の伊藤栄樹氏である。伊藤氏は庶民の心を心とする信条を貫き、検事には「被害者と共に泣け、国民にうそをつくな」とも訓示した▼国政にはびこる権力へのイエスマン。本来、守るべきものは何なのか。正義が評価されず「恥ずかしいこと」を「恥ずかしい」と感じなくなったら、この国はいったいどうなるのか。いつか来た道にもなりかねない。(鬚川修)
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