胸が痛む。神奈川県茅ケ崎市で90歳女性の運転する乗用車が赤信号に突っ込み、横断中の4人が死傷した交通事故である。過失運転致死傷罪で逮捕のニュースが「90歳の女」と連呼したのも心痛い▼「赤信号でもいけると思った」「家族に免許返納を勧められていた」。この3月に免許を更新したばかり。認知機能検査を問題なくパスした。そのことも「まだ大丈夫」という過信、油断につながったのか▼その一方で、何度も物損事故を繰り返していたという。もっと強く言って返納させれば良かった。家族も悔いが残るに違いない。事故は関係者全員を不幸にする▼「人生百年時代」の現実におののく。いつかわが身。体力、気力の衰えは人それぞれ。引き際を決断することは勇気がいることに違いない。ただ、返納は間違いなく自身を無事故にする▼その一方で代償も大きい。移動の不自由という現実。スーパーやかかりつけ医院、銀行が近所ならいい。石垣でも炎天下に買い物袋を提げて歩く高齢者を見かける。いつでも送迎できる家族があればいい。ひとり暮らしなら、などと自らに重ね合わせて想像してみる▼誰だっていつか高齢者になる。返納を言うはたやすい。されど。堂々巡りを繰り返す。決断すべき時は必ず来る。考え始めても早すぎではない。(慶田盛伸)
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