手元に「産声のない天使たち」の本がある。八重山商工高校が初の甲子園出場を決めて大騒ぎのころ、琉球新報初の女性支局長を務め、現在朝日新聞出版の週刊誌「AERA」記者の深澤友起さん(40)から贈られてきたものだ▼自身の体験を機に、知られざる赤ちゃんの死をテーマにした初の著書。そこにはなかなか表に出てこない死産や流産などにまつわる妊婦らの悲しみや苦しみ、葛藤が丹念な取材と優しいまなざしでつづられている▼妊娠すれば赤ちゃんは誰もがみんな元気に産めると思われている。それが実は医療が進歩した今も50人に1人が死産という出産は命の危険と隣り合わせの奇跡のたまものということ▼産院は天国と地獄が同居。幸せのオーラに満ちた病院の片隅で産声を聞けず悲しみに暮れる母親。中には自分を責め離婚した女性もいる▼出産の痛みは「鼻からスイカが出てくるよう」「ダンプカーがおなかや腰の上を走るよう」と表現される。そういう女性の大変さに思いを新たにしている折、出くわしたのが結婚披露宴でいつも話す加藤寛治自民党衆院議員の暴言▼「子どもは3人以上産みなさい」「結婚しなければ人さまの税金で老人ホームに行くことになる」はあまりにひどいセクハラだ。男性は出産と女性への認識を改める必要がある。(上地義男)
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