![豊かな自然から「最後の秘境」とも評される西表島。IUCNの勧告を受け、2018年夏の世界自然遺産登録は見送られる可能性が濃厚となった=2017年12月21日、小型無人機で撮影 豊かな自然から「最後の秘境」とも評される西表島。IUCNの勧告を受け、2018年夏の世界自然遺産登録は見送られる可能性が濃厚となった=2017年12月21日、小型無人機で撮影]()
政府が世界自然遺産に推薦していた沖縄県と鹿児島県の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について、環境省は4日未明、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が推薦書の根本的な見直しを求める「登録延期」を勧告したと発表した。IUCNは政府が示した二つの評価基準のうち、「生態系」を認めず、「生物多様性」について沖縄本島の北部訓練場返還地を編入するなどの推薦地域の見直しを求めた。最終的な登録可否は6月下旬のユネスコ世界遺産委員会で決まるが、2018年夏、期待されていた八重山初の世界遺産登録地の誕生は厳しい見通しとなった。
勧告では、「生態系」の評価基準で、大陸島の進化過程の顕著な例を4島に認めつつも、分断されている選定地域での生態学的な持続可能性に重大な懸念があると指摘。「推薦地は評価基準には合致しない」と明確に否定した。
一方、「生物多様性」の評価では、イリオモテヤマネコに代表される世界的な絶滅危惧種の種数の高さに触れ、4島を生息域内保全のための最重要地域を含んでいるとした上で、北部訓練場返還地の編入と推薦価値を持たない小規模地域を除くことで「評価基準に合致する可能性がある」との見解を示した。
4日に発表された勧告内容は概要にとどまるため、西表島への具体的な指摘や評価内容はなかったが、IUCNは昨年10月の現地調査で住民らに言及した▽主要な観光地域での適切な観光管理メカニズムや観光管理施設、観光開発・訪問者管理計画の実施—を今回の勧告で提示。▽絶滅危惧種の状態や動向、人為的影響、気候変動の影響に焦点を当てた総合的モニタリングシステムの完成▽構成要素の選定や連続性、種の長期的保護の可能性への再考—なども求めている。
勧告内容の詳細は、今月17日までに公表される予定。
今回、IUCNが勧告した「登録延期」は登録の可能性は認めつつ、より綿密な調査と推薦書の改定を要するもの。再提出後はIUCNの現地調査などが改めて必要になり、遺産登録までに最短でも2~3年はかかる。
登録可否は6月24日~7月4日に中東のバーレーンで開かれる世界遺産委で正式決定されるが、今回の勧告でことしの登録は見送られる可能性が極めて高くなった。
環境省は今度、評価結果を詳細に分析し、関係機関や地元とともに指摘事項への対応を検討する考え。
推薦地域は西表島の1万8835㌶と、沖縄島北部と奄美大島、徳之島を含む陸域計3万7946㌶。政府は17年2月に「多くの固有種や国際的な絶滅危惧種の生息地など貴重な自然環境を有する地域」として世界自然遺産に推薦していた。