石垣市宮良で「牛の病院」を経営する獣医師の船倉栄(ひさし・46)さん=浜崎町=が、ホルモン投与などにより牛の発情を人工的に促して計画的な種付けを可能とする「定時授精」の新手法を論文にまとめ、日本生物繁殖学会に発表した。
定時授精は以前からあったが、船倉さんはホルモン投与前にエコー診断で卵巣状態を確認後に人工授精を実施することで、ローコストで短期間の受胎を可能にした。その手法を「ショートシンク」法と名付け、論文をアメリカの専門誌に掲載した。
論文は英文で60㌻にも及んだ。船倉さんは「英語には苦労したが、定時授精で牛の空胎期間を短縮できる。農家の所得の向上につながる」と話している。
■獣医学博士号取得の夢かなう 宮崎大学の論文審査合格
船倉栄さんは3月、「定時授精」の論文で宮崎大学の論文審査に合格、念願の獣医学博士号を取得した。
北海道出身で石垣島で開業してことしで20年。博士になる夢をかなえるため、2013年に同大学院に入学。しかし、ウイルス感染によるI型糖尿病を発症。一日4回のインスリン注射を余儀なくされた。
3児の父親で、「人間は常に学び続ける責任がある。それを子どもたちに見せたかった」と、発症後も郡内の農家の協力を得て約1年半、定時授精の実験を続け、論文を書き上げた。
現在、経営する病院には5人の獣医師が在籍。博士号の取得で大学側から教授にとの誘いもあったが、「後進の育成に力を入れ、八重山の畜産に寄与したい」とさらなる貢献を誓う。