「本当にいい場所なんだよ」。自分たちの村にある学校のことを、村人が誇らしげに言うのを聞いて残念に思った▼台湾東部の東河郷北源村にある北源小学校は昨年9月現在で児童数20人。中心都市の台東市まで車で1時間半を要するエリアにある▼私はその日、北源村に夕方に着き、泊まらずに引き揚げる予定になっていた。1947年に創立したその小学校がどんな風景の中にあるのか確かめることはできない。台湾東部はもともと山と海が美しい地域。この目で見る機会は次に譲ることにした▼「本当にいい場所」と言った村人が40年以上前に同校を卒業した時は、全校児童は600人を数えたという。豊かな自然と過疎は往々にして表裏一体の関係にある。台湾は少子高齢化が進み、私が北源村へ赴いたのも、お年寄りのケアを取材することが目的だった▼八重山の学校は巣立ちの季節を迎えている。卒業生はそれぞれ唯一無二の存在として次のステップへ飛び立っていく。卒業生が少なければ少ないほど式はアットホームな雰囲気に包まれ、小学6年生と中学3年生の面々は土地の人たちの思いを全身に浴びることになる▼ふるさとに戻ってふるさとで尽くすもよし。ふるさとの外からふるさとに尽くすもよし。この先の生き方は無数の選択肢の中にある。(松田良孝)
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