台湾は、独立や大陸中国との統一、現状維持など国家のあり方に関するスタンスをめぐって政治的に敏感だ。こうした話題はタブーではなく、オープンに意見が交わされている印象がある▼昨秋、取材先で知り合った40代後半の台湾人女性に台湾政治への意見を尋ねてみた。「私は無政府主義者です」という彼女は「台湾はこの20年、政治はやってきたが、政策は進んでいない」と返してきた▼台湾で直接選挙による最初の総統が誕生したのは22年前の1996年3月。その後、3度の政権交代を経験し、社会運動から新たな政党が生まれるなど有権者が政治的な目標を実現する手法は多様化してきている▼総統の直接選挙はもはや当たり前。問題は、健全な政策論争を通じて社会の方向付けがなされているかどうか|というのが彼女の考え方であるらしい▼彼女が政治の中身への飽き足らなさを語るときに使ったのは「市民主義」という言葉だった。公正な選挙による民主主義は根付いたものの、その現状には不満があるから、「市民」を主人公にして政策論争を活発化させよ。社会にそう求めていると解釈できるかもしれない▼石垣市の「市民」はどうか。三つどもえの市長選に何を期待しているのか。その期待に応えるに足る公約を掲げているのはだれなのか。(松田良孝)
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