2012年3月31日の閉館以降、館内に置き去りになっていた県立図書館八重山分館の蔵書のうち、石垣市に関連する資料約5万4000冊の石垣市立図書館(野底由紀子館長)への移送作業が6日から始まった。同館では搬入後、登録して貸し出しすることも視野に入れている。与那国町、竹富町関係の蔵書は既に配送されて学校で使われているものもあり、約5年ぶりに同分館の蔵書が地元住民の手に渡り、活用が図られることになりそうだ。一方、同分館閉館後の図書サービスの在り方を検討する八重山広域図書館協議会の設置が実現しないまま、3市町に資料が分散してしまったことに市民から「許せない」との声も上がっている。
県生涯学習振興課管理班の真喜志政規主査によると、昨年1月ごろから与那国町、竹富町、石垣市の順にそれぞれに関連する蔵書を選んでもらい、3月ごろから与那国町と竹富町への配送も同時並行で実施。
選書されたのは概数で石垣市が約5万4000冊、竹富町が約2000冊、与那国町が約1400冊。配送された与那国町と竹富町によると、小中学校に配本したほか、公的施設でも利用する予定。市立図書館では、早めに登録作業を済ませ貸し出したい考えだ。
協議会の設置をめぐり行政側と市民との間で議論がされてきたことに同班の神谷亜州子班長は「県としては3市町で話し合ってほしいと要望していたが、あまり進まなかった経緯がある。本の劣化も懸念され、環境のいい場所で受け取ってもらえたことはよかったと思う」と述べた。野底館長は「根本的な解決にはなっていないかもしれないが、これ以上本を劣化させることはできず、(同館で)引き受けることになった。なるべく早めに登録して貸し出しができるようにしたい」と話した。
協議会の設置に向けて行政側にさまざまな提案をしてきた同分館の存続を求める会の大田静男代表世話人は「(設置を)約束しておきながらほごにして、求めた回答すらしてくれない。市民を無視するこんなやり方でいいのか」と、行政の姿勢を批判した。