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沖縄の文化を支える三線

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■音と形の美を追究

 去る3月4日の「三線の日」には、八重山をはじめ県内、県外、海外で多彩なイベントが実施されたことは、本紙の報道などでご承知のことと思う。第22回目を迎え、八重山では「弾きならしょうら ばがすぃまぬ肝心」をテーマに総勢およそ250人が「鷲ぬ鳥節」など14曲を高らかに会場に響かせた。

 本島では、読谷村文化センター鳳ホールでの演奏会をはじめ、各地で多くの団体が演奏会を開いた。八重山関係でも、八重山古典民謡保存会が八重山古典民謡の普及発展に多大な功績を残された故・大濵安伴氏の13年忌、みね夫人の7年忌を供養する演奏を仏前で行うなど、各地でさまざまな取り組みがなされた。

 沖縄の音楽文化を支えてきた三線は、きわめてシンプルな構造をもつ弦楽器である。黒檀(黒木)などで作られたおよそ80㌢ほどの棹(ソー)、音を響かせる胴(チーガ)、3本の弦(チル)。主な装置はこれだけであるが、沖縄の人々にとっては、音色とともに華美な装飾を排した三線の形が極めて深い精神性を帯びており、家宝として大切にされている。

 海外においても、沖縄県系人が三線および沖縄音楽をこよなく愛好していることが、「三線の日」の取り組みなどでよく分かる。例えば2011年7月に、(社)沖縄県対米請求権事業協会が実施したブラジル、アルゼンチン、ボリビア、ペルー4カ国で岸本吉雄琉球三線楽器保存育成会会長、外間善盛副会長らが鑑定会を開催し、その結果、多くの三線が持ち込まれ、琉球王府時代の名器が4丁見つかるなど、海外でも沖縄県系人を中心に大切に保管使用されていることが分かった。

 

■三線のチカラ展

 現在、沖縄県立博物館・美術館で開催されている「三線のチカラ」展は、「形の美と音の妙」をサブタイトルとした意欲的な企画展として高い評価を受けており、ウチナーンチュの心に響く気品ある三線の姿と音色に魅了される人々も多い。特に、名器の中でも最高峰とされる盛嶋開鐘(ムリシマケージョー)はじめ、翁長(ウナガ)開鐘、志多伯(シタハク)開鐘などの名器を展示していることは、特筆に値しよう。なお、開鐘(ケージョー)とは、首里城の明け方に突く開門の鐘の音(開静鐘)にたとえて高らかに鳴り響く三線のことを言う。

 今展示会は、音とともに沖縄の豊かな文化を支える美術工芸品としての三線に主眼をおいていることが特徴であろう。工芸品としての三線には、華美な装飾を寄せ付けない高い気品のあることがよく理解できる。

 同展図録の付録CDは、沖縄県立大学教授の比嘉康晴氏が、「かぎやで風節」「述懐節」など12曲を盛嶋開鐘、翁長開鐘などの名器で演奏し歌っている貴重な作品である。

 

■八重山の三線も展示

 八重山関係では、石垣市立八重山博物館所蔵の「八重山藏元絵師画稿」「知念大工型(チネンダイクガタ)銘真仁屋(メイ マジンヤ)や、八重山クルチから作られたという「屋良部崎開鐘」などが展示されている。沖縄県内でも特に素晴らしい唄三線の名曲があり、すぐれた唄三線の名人を輩出している八重山においても、多くの人々に三線の音とフォルムの美しさをじっくり味わっていただく同様の企画展を県、市町で取り組んでいただきたいものである。


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