ことし3月の石垣市長選は、新人で革新系市議の宮良操氏(61)と3期目を目指す保守系現職の中山義隆氏(50)に加え、自民党県議の砂川利勝氏(54)を擁立する動きが具体化しているため、保守分裂選挙の可能性が濃厚となっている。「保守分裂は革新を利するだけ。共倒れになる」との見方が一般的だが、なぜ分裂を招く第三の候補を担ぎ出そうとするのか、勝算はあるのか。さまざまな臆測が飛び交っている。
■保守市政を守る
「現職では勝てない。保守市政を守るため、保守から第三の候補を出さなければならない」。
砂川氏に近い関係者によると、現職の市政運営に対し保守支持層に不満が広がっている。直近では、資産公開で明らかになったマンション所有と株取引による大損、自衛隊配備計画に対するあいまいな姿勢、現職が刑事告発した職務強要事件などが反発を招いていると指摘、これらが砂川氏擁立の動きを加速させているという。
革新系には保守分裂を歓迎する向きがあるが、楽観できない状況も。野党側の候補者選考委員会が上原秀政氏に決定した後、白紙に戻して宮良氏を最終決定した際、「保守でも自衛隊は必要ないという人もいる。だから同じ保守系の上原さんに決まったときは応援しようと思ったが、革新系の宮良氏に決まったのでもう応援できない」と嘆く保守支持者がいるからだ。砂川氏の浮上で、当てにしていた現職への批判票が流れる恐れがある。これに加え、砂川支持者は「宮良に反発する革新票も取り込める」と意を強くする。
■揺さぶり?
現職関係者は「砂川氏に勝てる要素があるとは思えない。保守が分裂すれば共倒れの危険性がある。砂川氏が負ければ県議補選にも出られない。砂川氏が政治生命を賭けてまで出馬するとは思えない。何が目的か」と首をかしげる。
中山氏は過去に、副市長ポストをめぐり砂川に近い市議と対立したことがある。このため、周辺は今回の動きを取引条件を決定的にするための「揺さぶりではないか」との見方を拭えないでいる。
しかし、砂川支持者は「情勢分析ができていないのだろう」と冷ややか。水面下で支持固めを進めており、有力者の協力を取り付けたという情報も飛び交う。現職側は「建設、観光、商工関係など支持は固まっている」と疑いの目を向けるが、水面下の動きだけに見極めに苦慮しているのが実情だ。
■組織票の行方
自民党石垣支部(石垣亨支部長)は昨年12月23日、中山氏を予定候補者として県連に推薦状交付を申請することを決定。「支部決定なのでもうすぐ降りるだろう。組織決定に反して砂川氏を公認するはずはない」と確信する。
砂川氏は前回県議選で自民党公認で当選し、現在は県連の幹事長代行の役職にも就いている。「砂川氏は公認の県議。県連が砂川氏を公認すれば中山の組織は骨抜きになる」とけん制する。
県連は10日、那覇市内で新春の集いを開く。中山氏、砂川氏、市議らも出席する予定だ。それまでは水面下の動きが続くものとみられ、10日以降、ヤマ場を迎える。